「土産土法」で醸す、福島秘蔵の酒の味やいかに…。「会津娘 純米酒」~fukunomo愛好家 林さんの今月の酒語り(2018年6月号|髙橋庄作酒造店) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

「土産土法」で醸す、福島秘蔵の酒の味やいかに…。「会津娘 純米酒」~fukunomo愛好家 林さんの今月の酒語り(2018年6月号|髙橋庄作酒造店)


今月のお酒は「会津娘 純米酒」
穏やかな香りに力強い旨味。それでいて飽きさせない。
「土産土法」で醸す酒が会津にはあった。
歴戦の吞兵衛たちをも唸らせる、福島秘蔵の酒とはいかに…。
今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@sake_kaeru)が、fukunomoを体験しての感想および紹介文を寄稿してくださいました。今月は会津若松市にある髙橋庄作酒造店。そのお酒とのマリアージュは会津名物の馬肉にチーズなど豪華ラインナップ。
福島の酒の中でも会津娘は特にお気に入りだそうで、今回は林さんの会津娘愛にあふれています。
そんなレポートをどうぞご覧ください。
※写真はfukunomo編集部撮影のものとなります。

【連載第8回目】

6月になりました。新緑もすっかり色濃くなり、空はだんだんと梅雨の気配を感じさせますね。
一般的には梅雨はあまり好まれないようですが、私は嫌いじゃありません。たとえ空が鉛色でも酒飲みにかかればどんな日だろうと、それはステキなお酒日和になります♪ これは実に、呑兵衛であることの幸せと言えるでしょう。(笑)
お酒の楽しみ方は人によって色々ありますが、私の場合、一人心静かに、季節の風流を感じつつ楽しむのが好きな飲み方の一つです。気分の問題ではありますけれど、雨や雪の日には特に、その日、その天気、その季節ならではのお酒の味わいがあるように私は感じるのです。
そんな中で、今の季節は特に、新緑特有の雨の気配というか、匂いのようなものが強い。静かに響く優しい雨音を聞き、暮れゆく雨の夕暮れの美しさを感じつつ酒を愉しむ…なんていうのも、なかなか良いものなんですよね。
そんな梅雨空をも愉しむためのパートナーとしてお届けする今月のお酒は、会津若松市から橋庄作酒造店さんの銘酒「会津娘 純米酒」です。
この「会津娘」は根強い愛好家も多く、地元でも入荷待ちとなることが多い入手困難な銘酒です。同じ「会津娘」ブランドの中にも色々なバリエーションがあるものの、いずれも素晴らしい味わいの酒ばかり。その旨さは特に、日本酒とのつきあいが濃密な人にほど、より深く響くのではないかと思います。
「あなたは、銘酒 会津娘を知っているか。それとも、まだ知らないか──。」
歴戦の(?)呑兵衛の方々には、こう問いたくなるほどのお酒。
なにしろ私自身もまた、この蔵のお酒がプライベートでも大好きでして。県内外、さまざまな地域の日本酒を入れ替わり立ち替わり常にストックしている私ですが、めまぐるしく変わる顔ぶれの中でも会津娘さんはいつでもそこにいる大事な存在なのです。(ただし美味しくてすぐに飲み干してしまうので、同じラベルだけど瓶は次々に入れ替わってます(笑))
それにしてもfukunomo、今月もやってくれますね。今回県外の方にこのお酒をご紹介できることは、個人としても嬉しい限り…というのが半分。
あとの半分は、あまり有名になりすぎて私が普段から飲む分がさらに入手困難になったらどうしようかと実は冷や冷やしてもいます。ここのお酒、本来は大規模な頒布がされるような代物ではない、福島の秘蔵の酒なのです。
「会津娘」ブランドの酒はハッキリいって、高値で取引されてしまっているプレミアム酒に全く負けません。あまりにも地元で愛されてほぼ消費され尽くしてしまうため、基本的にはほぼ福島県外不出の酒といえます。会津に出向いても、探して見つかるとは限りません。
本音を言うと、個人的に親しい人とfukunomo愛好者の方にしか教えたくない…かも。(笑)
その蔵元である橋庄作酒造店さんの創業は、幕末から明治にかけて。2代目蔵元以降は「髙橋庄作」という名を代々襲名しており、現在の杜氏は5代目なのだそう。まるで歌舞伎役者のようですよね。
その酒造りのこだわりは、「土産土法(どさんどほう)」
全て会津の米と水を使い、土地の人が、土地の手法で醸すという、「オール会津」をつらぬくことです。
原料である会津の米は食味コンクールでの特A取得回数が全国トップクラスであり、特Aの常連。会津は酒の技術はもとより、米の品質自体も極めて高いのです。
高橋正作酒造店さんの、その贅沢な酒造りのこだわりゆえに生産量が限られることは言うまでもなく。重ね重ね、fukunomoユーザーの方には、このお酒がお手元に届くことは朗報以外のなにものでもないですね。( *´艸`)

今月のお酒 「会津娘 純米酒」


さて、今月もそろそろお酒を開けていきましょう。
芳香は穏やかでさりげなく、少し控えめ。それでも立ち上る微かな上品さは、プレゼントの包装紙をわくわくしながら開けたときのような、待ち焦がれた真新しい本を発売日に開くときのような、おろしたてのシャツを広げたときのような、そんな期待感と爽やかさが混じった匂いのような感覚。
プライベートでも普段から大切に飲んでいる銘柄ながら、封を開けるたびに、いつもそんな新鮮さを感じさせてくれます。
一口含むと、一瞬だけ鼻に抜ける穏やかな「香気」。その一瞬に、福島の酒「らしさ」を感じます。
そのあとに続くのは、一気に引き込まれるかのような旨味。喉越しを求めるような飲み物ではないはずなのに、あまりの心地よさに、驚くほどスムースに口の中に入っていきます。
口に広がった強い旨味の余韻はあくまでもエレガントで、しつこさを感じる前にス……っと消えていき、次はいわゆる「辛口」のようなスッキリさが強く満ちてきます。
とはいえ、「辛口」とはいっても力任せにビリビリさせるようなものではなく、強い「辛口」ながらも、やはりどこまでも心地良いのです。僅かに残る一口目からの「香気」と旨味とが心地よく織り重なって、さざ波が海へと引いていくかのようで…
波がひいた後の最後の余韻には最初に感じた「香気」と後引くような旨味が残り、名残惜しさがまた次の一杯へと進ませる。
穏やかで優しく、しかし退屈させない、洗練された、いつまでも飲み続けていられるような味わい。
「会津娘」は山の酒なのに、頭の中に寄せては返すさざ波を静かに見つめているような不思議な感覚のイメージがわいてくるのはちょっと不思議ですが、これはもしかすると海ではなく、湖。会津が誇る猪苗代湖の美しいさざ波なのかもしれません。

簡単にまとめると、

良い香りはあるのに、強すぎない。

辛さはあるのに、辛さで押し切らない。

旨味は強いのに、モタれる前にスッ…と引く。
心地よく抜けるのに、後味の微香と旨味があとひきすぎて、つい次の一杯が進む。
原料となる米も良ければ、その活かし方もまた秀逸です。本来、酒を造るための米は削れば削るほどに「スッキリ」させたり、正直なところ「粗」を隠しやすくもなります。
しかし、この会津娘の「精米歩合60%」というのは、良くも悪くも酒に個性や表情を感じさせやすいと共に、造り手のレベルも知られてしまう酒。ごまかしが効きません。
そういう状況で、米の雑味をもほぼ全て「旨味」へと変換して味わいを調和させ高めてしまうマジック。それこそが「福島の酒」全般に共通する旨さの真髄ともいえる部分の一つですが、この会津娘さんはそれを特に強く感じさせます。実に完成度が高い、素晴らしい酒です。
あとは火入れしてある酒の強みというか、生酒と比べて長い時間飲み続けていても「飲み疲れしにくい」というのもポイント高いです。普段からくたびれているOssanの胃腸にも優しい(?)。
だからこそ、最初にもお話したように、歴戦の(?)呑兵衛の方々には特にこの酒をおすすめしたいですね。呑兵衛にとって「かゆいところに手が届く」ような存在です。(でも広がりすぎるとやっぱり私の飲む分が無くなりそうなので、お手柔らかにお願いします(笑))
酒だけでもかなりの満足感高いですが、次はいよいよ、今月のペアリングです。

今月のマリアージュ/ペアリングセットは



一品目は、さくらやきにく
会津で親しまれている馬肉ですが、焼肉用馬肉は全国ではあまり流通していないのではないでしょうか? 福島県内でも、会津に行かないとなかなか手に入るものではありません。

食べたことがないと味のイメージが付きにくいかも知れませんが、これはクセもキツいニオイも少なく、比較的キメ細やかな旨さを感じられる上等な赤身肉です。
最近は牛肉でも脂の旨さだけでなく、たとえば岩手の短角牛のように「赤身の旨さを追求した肉」が人気になってきていますが、つまり、ソレです。上等な赤身肉ならではの旨さを堪能出来る逸品なのです。
難点は、焼肉用であったとしても黒毛和牛並に高級であることでしょうか。あの…fukunomo、けっこう、採算とれているのかどうか時々心配になるんですけど今月のは本当に大丈夫です??
濃いめの味付けがしてあるお肉ですが、会津娘の絶妙のバランス感は、これを合わせても乱されません。むしろ、飲み飽きない少し控えめな味わいがお肉にじわじわ…じゅわじゅわぁぁ…っと、口に含むほどに馴染んでいき、お口の中に幸せがいっぱいに広がります。単品よりも、圧倒的に旨い。素晴らしいペアリングが成立します。
つづいては、「会津べこの乳発 熱してよいよいチーズ」。会津べこの乳の牛乳は、高級百貨店でも人気の一品。そういう名門ブランドが作りあげた本格的なモッツァレラチーズです。

モッツァレラなのに淡泊ではなく。舌触りもしっとり、ねっとり、チーズの旨さも驚くほどシッカリ。
ただ、敢えて一つだけ難点をあげるとすれば。
そもそも原料が高級なのもあってこれ、普通のモッツァレラチーズの何倍もの金額に…。というか、あの、採算とか、その、fukunomoさん…?
これを「会津娘」と合わせてあげるとですね…。会津娘が、日本酒でありながら上等なワインのような表情をも感じさせた上に、まるで「もぎたてトマト」のようなジューシーさも感じさせてくれる「化け方」をしてくれるんですよ…。
「モッツァレラチーズとお口の中で絡ませる、ジューシーなトマトを思わせる味わい」
…ここまで言えば、皆まで言わずとも、それがどういうことか通じてしまいますね?
つまり、控えめに言っても最高です。
そこに「特別純米酒 無為信」の酒粕を使った風味高いクラッカーまで用意してしまうんですから、なんたる贅沢…。

これに続くのは、「おくや」さんの塩茹でうまピー
極大粒の会津産落花生が、茹でたてのままレトルトになっています。

食べてみると、びっくりするくらいに、しっとり。ピーナッツだけど、これは乾物のピーナッツとは全く「別物」ですね。豆本来の旨味をしみじみと味わいながら…というか、これまた美味しいです。
最初少し驚く味でしたが、これはじっくり噛んで味わうほどに美味しい
そこにとどめは、僅かな旬の時期しか味わえない、会津の伝統野菜「余蒔きゅうりなんかまで入ってしまうわけですよ。ちょっと、今月のfukunomoはいつもに輪をかけて贅沢しすぎなんじゃないですか…?

さらに追伸として。普段はシークレットとされている、fukunomoプレミアムコースだけについてくる「もう一本」の酒が、今回はこの会津娘の上位互換品、私が愛してやまない「会津娘 無為信」だったりするらしいのです…!
この「無為信」は、この会津娘 純米酒の良さをさらに究極まで引き出したともいえる、入手がさらに困難となるマニア垂涎の一品です。押し売りはしませんけれど、今月分は、プレミアムコースが個人的には特におすすめかなぁ…。( *´艸`)
というわけで、またまた堪能させていただいちゃいましたfukunomo。
今月は特に豪華+個人的にも大好きなラインナップでした。
fukunomoご愛好の呑兵衛さま各位は、乞うご期待。まだの方は、ぜひこの機会に楽しんでみてくださいねー。

<fukunomoお申し込みのご案内>

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※編集部より
髙橋庄作酒造店さんの『会津娘』と、ベストマッチなおつまみがついてくる、fukunomo 2018年6月号は、6月20日お申込み締切です。