感じるままに飲んでほしい 地域を愛し、地域の環境を生かした 若き蔵元の目指す酒造り 会津酒造《福島県南会津郡南会津町》 - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

感じるままに飲んでほしい 地域を愛し、地域の環境を生かした 若き蔵元の目指す酒造り 会津酒造《福島県南会津郡南会津町》


会津酒造は、約330年前、元禄年間に創業した酒蔵です。本家は日本酒だけでなく醤油と味噌も造っていましたが、約100年後に分家した渡部家が独立してお酒のみを造るようになりました。
渡部景大さんは9代目蔵元。真冬はマイナス20度になることもある極寒の地で、土地の特徴を生かした独自の酒造りをする會津酒造のこれまでとこれからを伺ってきました。
9代目蔵元/杜氏 渡部 景大さん

東京農業大学の醸造科を出て、2010年の春に実家に戻り、もうすぐ9年になります。戻ってすぐに、30年以上のお付き合いがあって、僕も子どもの頃からかわいがっていただいている東京の酒屋さんに「大学出たばかりで社会経験がないから、うちに修行しにおいで」と誘って頂き、半年ほど修行をさせてもらいました。更に、現代の最先端の酒造りを僕に見せるため、全国の蔵の見学にも連れていってくれて、すごく刺激にも勉強にもなりました。
全国の最先端の蔵を見て、このままではいけないと思った僕は、「蔵を潰すか、そうでなければ借金をしてでも設備投資をするか、どちらかにしよう」と、勇気を持って社長である父に相談し、なんとか設備投資をすることに決めました。今は自分が社長に就き、設備投資も自分の責任でやっています。
造りに関しては、最初の2年は、父の代からの杜氏さんと一緒に造っていたのですが、杜氏さんが身体を壊してしまい、その後はすべて自分が責任者としてやっています。自分が蔵に入るようになってからは、蔵の掃除の徹底から酒の造り方まで、やり方をすべて変えました。
銘柄もそれまでバラバラだったものを『會津』という銘柄に統一しました。『會津』は、基本的に南会津産の酒造好適米『夢の香』を使って福島県内中心に出す、地産地消のお酒です。南会津産の『夢の香』を毎年使って、再現性や品質を高めていくというアプローチで造っています。ただ、『會津』を造りながら、酒造りは知識だけではなく、経験が必要と感じました。それで、倍以上の経験値を得たいと思って造り始めた銘柄が、今の『山の井』です。『山の井』は、『會津』とはまったく逆のアプローチをとっています。つまり、先に米や麹などの材料を決めて、その品質を高めていくのではなく、まず、僕が造りたい味を決めて、それに合わせた設計図を考え、最後に材料を選ぶんです。設計図に合うものなら県外のお米を使うこともあります。
『山の井』では、季節商品などを除き、使っているお米や、精米歩合などのスペックを載せません。裏ラベルにも「感じるままに飲んでください」として、詳細を書いていないのですが、それは先入観なく味を感じていただきたいからなんです。ふだんからお酒を飲まない人は、大吟醸とか純米酒って書いてもそもそも分からないし、詳しい人は逆に「このお米だとこういう味のお酒だろう」って飲む前から先入観を持たれてしまうことがある。そうじゃなく、真っ白な状態で飲んでから、感じて欲しいんです。酒屋さんには説明の手間をかけさせてしまいますが、ご協力を頂けています。

蔵の特徴として、真冬はマイナス20度にもなるということと、超軟水の地下水を使っているということがあります。この環境では、酵母・・が活発に発酵しづらいのですが、その分、厳しい環境で育った少数精鋭の良い酒母  を使えば良いのではないかと、自分の蔵に合わせた造り方を研究しています。尊敬する蔵元さんはたくさんいますが、環境がまったく違うので、他と同じことをやっても、ほとんどうまくいかないですね。自分の蔵だったらどうすれば良いだろうかっていうことを常に考えています。
個人的には、柔らかく綺麗で、ずっと飲めるような甘みがあって軽いお酒を造りたいと思っているんですが、ちょうど南会津の風土や気候、すべて含めた蔵の特徴と、僕の好みの味の方向性がイコールだったのはすごくありがたいなと思っています。
南会津では全国でも早い段階で日本酒乾杯条例ができました。日本酒を通じて地元を盛り上げることに貢献していければと思います。

会津酒造
福島県南会津郡南会津町永田穴沢603
TEL.0241-62-0012
http://www.kinmon.aizu.or.jp/