今月のお酒は「特別純米酒・磐梯山」
今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@sake_kaeru)が、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
今月のお酒は、名山「会津磐梯山」の麓にある磐梯町、磐梯酒造さんからお届けする「特別純米酒・磐梯山」です。
【連載第19回目】
令和になって最初の発表となった全国新酒鑑評会の結果、今年も福島の酒は金賞受賞数日本一を獲得し、7年連続となりました!
これは「同じ県による6年連続日本一」という、明治時代から続く同鑑評会に昨年打ち立てられた史上初の記録を、さらに更新させた素晴らしい快挙です! おめでとうございます!!ここでさらに注目して頂きたいのは、福島はこの7年だけが凄い訳ではない! ということです。一般の方にはあまり知られていなかったのですが、震災前からずっと旨い酒を造り続けてきた結果として、
「福島県は2005年から今までの14年間で金賞受賞数が日本一か二位のどちらかしか取っていない」という驚くべき成績が見て取れるのです。
全国新酒鑑評会金賞受賞というのは、簡単に取れるものではありません。まず、出品する酒は原則一つの酒蔵につき一点のみ。つまり、全国の酒蔵から選りすぐりの最高の一本のみが集められます。今年度は、その数857点。そのうち成績が優秀と認められた入賞酒は416点。これは出品酒全体の48.5%ですから、集められた最高のお酒から半分程度しか入賞できません。さらに金賞となると、それら入賞酒のうち「特に成績が優秀と認められた出品酒」のみに与えられる称号です。今回の金賞受賞数は全体で237点。約27.6%となり、最終的には出品酒の4本に1本程度しか金賞にはなり得ないのです。この比率は、例年ほぼ変わりません。そのような厳しい鑑評会において、ここまで長い間連続で1位か2位しか取っていない福島の日本酒の品質は、まさに驚くべきレベルであると言えます。
【2005年以降14年間の、福島県の金賞受賞数順位】
2005年(平成17年度)醸造 23銘柄 1位
2006年(平成18年度)醸造 21銘柄 2位
2007年(平成19年度)醸造 17銘柄 2位
2008年(平成20年度)醸造 18銘柄 2位
2009年(平成21年度)醸造 20銘柄 1位
2010年(平成22年度)醸造 19銘柄 2位
2011年(平成23年度)醸造 22銘柄 2位
2012年(平成24年度)醸造 26銘柄 1位
2013年(平成25年度)醸造 17銘柄 1位
2014年(平成26年度)醸造 24銘柄 1位
2015年(平成27年度)醸造 18銘柄 1位
2016年(平成28年度)醸造 22銘柄 1位
2017年(平成29年度)醸造 19銘柄 1位
2018年(平成30年度)醸造 22銘柄 1位
(すべて醸造年度表記のため、今年・令和元年5月17日に発表された結果は、2018年〔平成30年度〕醸造分になります)
しかしながら、福島の酒の魅力は、鑑評会のお酒だけではありません。
福島の酒は全般的に『香気』のベールをまとっていることに加え、「雑味を旨味に変えることが得意」という特徴を持っています。
原料となるお米の中で、酒造りにとって本来「雑味」とされて嫌われやすい部分すらも、醸造の中で「旨味」や「個性」としての味わい深さに変えてしまう、魔法のような技術。マイナスになるはずだった要素を、プラスへと逆転させてしまうのです。この結果、福島の酒は鑑評会酒のみならず、普段から飲まれている「普通酒」までもがやたらと旨い! ということになり、しかも「各酒造ごとの個性が生まれやすい」ことにもつながります。
前置きが長くなりましたが、fukunomoがお届けするのは、そんな魅力的・個性的な福島の銘酒の数々。地元でなければ手に入らないとっておきの一本を、地元の美味しいものとともにお届けします。今月も楽しんでくださいね♪
さて、今月お届けするのは名山「会津磐梯山」の麓にある磐梯町、磐梯酒造さんからお届けする「特別純米酒・磐梯山」。精米歩合は58%。事実上の「純米吟醸」です。しかも、使っている酒米は高級酒米である「五百万石」。福島の酒「らしさ」ともいうべき「上品な香り」「米の旨味」「適度なキレの良さ」「クセになるようなあと引く味わい」などを出しやすい酒米です。
こんな贅沢なお酒、入れてもらっちゃっていいんでしょうか…!
では、今月も張り切って開けてみましょう♪
一口目に感じるのは、どこまでも澄んだ蒼のイメージ。それは、今の時期に良く見られる、どこまでも晴れ渡った空の空間を思わせるようで。
そんな一面の蒼の中でも圧倒的な存在感を示す美麗な磐梯山と、その姿を映す「天鏡」、猪苗代湖。あまりにも、あまりにも美しい自然美のコントラストを感じさせます。
このお酒は、キレはあるが、強すぎない。味わいもあるが、重すぎない。
酸味はあるが、とても穏やか。爽やかな口当たりとともに、驚くほど自然に、するすると身体にお酒が沁みてきます。「デトックス」的とでもいうべきでしょうか。解毒してくれる、中和してくれる。そんな感覚を持たされます。
日々の生活の中でいつの間にか擦り減らされた感性も、もやもやした気分や疲れも、鬱々としがちなしがらみも、全てをいちど綺麗に洗い流してくれるかのよう。心も身体も優しく潤して、リフレッシュしてくれるかのような味わいですね。
最初の「蒼」に続いて中盤以降に感じさせる味わいは、「萌黄」のイメージ。芽吹いたばかりの新緑の若芽のような生命の躍動感。最後に残るのは、木漏れ陽のような暖かさ。甘さと感じさせないほどの、残り香のようなほのかな甘さでフィニッシュ。
これは、まさに「命の水」。磐梯の自然の恵みと呼ぶにふさわしいお酒です。
このお酒を、おつまみと合わせてみましょう。
今月のマリアージュ/ペアリングセットは
- サバのみりん干し (福島県いわき市/上野臺豊商店)
- 喜多方産アスパラガス (福島県喜多方市/エガワコントラクター)
- しいたけのアヒージョ (福島県耶麻郡磐梯町/ばんだいファーム)
- フレッシュピクルス&ジュレ (福島県耶麻郡磐梯町/ばんだいファーム)
- チーズのたまり漬 (福島県郡山市/小田原屋)
今回のペアリングのポイントは、やはり、このお酒の「リフレッシュ感」ですね。そのまま飲んでも非常に心地よい酒ですが、これを例えば脂の強いおつまみに合わせてあげると、その本領をバッチリ発揮してくれます!
そこで最初に合わせるのが、海産物きっての脂の強さが魅力のサバ。その旨味をさらに増幅させるみりん干しです。
今では一般的に販売されているこうした魚の「みりん干し」ですが、実は福島の浜通り、いわき市でサンマをみりん干しにしたのが発祥だとも言われています。
そこで今回は、地元いわきで水揚げされたサバを、ぽーぽー焼きやメヒカリの開き干しでも有名な、地元いわきの上野臺豊商店がミリン干しに手がけたものが用意されています! 上野臺豊商店さんのお魚加工品、美味しいんですよー?
コゲないように注意しながら、よーく脂がじゅわじゅわ…っと零れてくるように焼き上げたアッツアツのサバを、はふはふしながら口に入れると…。
うん! この強烈な旨味。
この強烈なサバの脂やニオイに、今回のお酒を合わせると…
おお…。
思ったとおり、たっぷりの旨味を口の中全体にまんべんなく染み渡らせたあと、キレイに流してくれる。美味しいおつまみの旨味が、口の中で花開いてより「広がる」感じが心地よいですね。
次に合わせるのは、会津喜多方のエガワコントラクターからお届けするアスパラ。この時期の福島はアスパラがとっても美味しい季節です。
なかでも会津や阿武隈高地のアスパラは味も食感も特に良く、県内でもブランド野菜として知られています。
今回は、新鮮なアスパラを牛薄切り肉と玉ねぎと一緒に合わせて甘辛く炒めてみました。こうすることで、今度は肉料理との相性も試してみます。タレが良く絡んだ牛肉とアスパラを交互に、あるいは一緒に食べてかみしめると…これはお酒がソースや肉汁と絡み合うことで、ジューシーさがさらに増しますね。それでいて、もたれさせず爽やかに「リフレッシュ」させてくれる。アスパラのシャキシャキの食感も、とても良いアクセントとして作用して理想的。料理もお酒も、双方が引き立つこれは、まさに「ペアリングの醍醐味」ですね。(*´▽`*)
また、今回の「特別純米酒・磐梯山」は、洋食にも非常に高い相性を誇ります。
オリーブオイルをたっぷり使った椎茸のアヒージョは、会津で育てられた原木椎茸を使っています。
椎茸はダシに使われるほど味が強いキノコですが、原木椎茸となるとなおのこと。オリーブオイルとキノコの旨味たっぷりのアヒージョと合わせるお酒の相性は、下手な白ワインよりもはるかに良いくらいに思えます。
そしてこれらを食べる合間に箸休め的にチョイチョイはさみながら食べると美味しいのが、ピクルスの寒天寄せとクリームチーズのたまり漬け。
それぞれ適度な酸味や、スモーキーさにも似たコク味がアクセントとして作用し、魚と肉、アスパラ、アヒージョのいずれにも、味の広がりがさらに生まれます。それぞれのおつまみ同士がお酒を中心にハーモニーを奏でるかのよう。
それにしても、寒天寄せは思った以上に優しい酸味で、ほのかな甘さが心地よいね。酢の物にありがちなキツさをあまり感じさせず、するするといけてしまう。白ワインと胡椒、ローズマリーが味の決め手なのかも。
色々と合わせてみたものの、「特別純米酒・磐梯山」。ここまでソツなくスマートな味わいは、いわばオールマイティといえますね。どんなおつまみにも合わせてくれる懐の広さ。このお酒の「リフレッシュ感」は魚だけでなく、肉に合わせても、味わいをとても瑞々しく爽やかにしてくれます。これを「水のよう…」と称えるには、あまりにも旨味がありすぎる。しかし透明感も強い。お酒の減りが、今回もかなり早いペースになりがちです。危ない、危ない。(; ・`д・´)
今月も、こんな隠し球を会津はまだ持っていたのか…と、改めて驚かされるような、非常に高いレベルのお酒です。今までの他のお酒ともまた違う。磐梯酒造さんならではの味わいを感じさせる一本でした。
磐梯酒造さんは、決して大きな酒蔵ではありません。地元に愛され、地元の米と水を使い、地元の杜氏が受け継いできた、地元のためのお酒を醸し続けています。会津以外の一般小売店で見かけることもあまりなく、同じ福島県民でも飲んだことがある方はそう多くないでしょう。今月もfukunomoは、またしてもやってくれました。こんな素晴らしいお酒との出会いを頂けるなんて、まさに至福…!
ここまで頼りになる万能のお酒であれば、たとえばお酒を持って晴れ渡る空の下での大勢でのピクニックやキャンプはもちろん、グランピングなどちょっと贅沢なアウトドアなどにも最適と言えるかもしれませんね。
特に、今回入っていた「アヒージョ」なども、そうしたアウトドアで作られる料理の定番。アスパラをはじめとしたバーベキューに合わせてみるのも良いかもしれません。
「リフレッシュ感」を感じさせてくれる一本を持って、とっておきの休日を過ごしてみるのはいかがでしょうか。
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