今月のお酒は「穏 純米吟醸」
今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さん(@sake_kaeru)が、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
復刻版第1号は、全国各地多くの人に愛される、仁井田本家さんからお届けする「穏 純米吟醸」です。
※好評でしたfukunomo 2016年6月号の復刻版となります。一部、写真とおつまみの内容が異なります。
【連載第21回目】
約1年となる休止期間を経て、久しぶりにfukunomo(ふくのも)が再始動することになりました!
これは、昨今の新型コロナウイルスの影響下で困っている福島県内酒蔵やおつまみのメーカーさんの力になりたい!という後押しもあってのことです。ありがたやありがたや。
fukunomoは、美食の宝庫である福島県の隠された魅力を、こっそり教えちゃう貴重な頒布会。
実は何気にやたらと美味しいものに恵まれている福島県ですが、昔から一貫しての課題は「それらの魅力を充分に伝えつつ、まとめて楽しんで頂ける手段が少ないところ」。
現地の人間にとってはある意味幸せな悩みなのですが、県内それぞれに非常にレベルが高い美味しいものがありながらも、なにしろ舌の肥えまくった県民がそれらを「当たり前」と思ってしまっているため、その魅力の紹介が致命的に苦手という弱点があったのです。また、それぞれのメーカーや浜通り、中通り、会津など福島県内各地域の垣根を越えての「ペアリング」をはじめとしたさまざまな提案は、これまで非常に少ないものでした。
結果、東日本大震災前から福島の美食は極めてレベルが高い反面、「知る人ぞ知る」ような、地味~~~~~~~な扱いを受けておりました。ぶっちゃけ、いいものは沢山揃っているのに極端に商売やブランド戦略が下手っぴなのです。なんだかすいません、美味しいものを地元でばかりコッソリ楽しんでしまっていて…。(´・ω・`)
たとえば福島の日本酒は明治時代から続く全国新酒鑑評会金賞受賞数でも、前人未踏の異次元的な記録「7年連続日本一」を未だに継続中です。近年にはじまった世界最大級のコンクール(IWC)の日本酒部門では、一年に一度、全ての出品酒の中から「世界一」の称号に選ばれたお酒の蔵元が県内に二つもあります。あまり知られてはいませんけれども。。。。。(ノД`)・゜・。
福島の日本酒について詳しくは、ビジネス誌にも私が書いた記事が掲載されているので、こちらもぜひご参照ください!
ともあれ。
その知られざる魅力をちゃんと県外にもおすそ分けしようと始まったのが、このfukunomoではあるのです。特に新型コロナウイルスで社会全体に自粛ムード、ステイホームが広がっている中で、ちょっとでも福島からの幸せがおすそ分けできて、みなさんの暮らしに潤いを持って頂ければ幸いです!(*´▽`*)ノシ
さて。今回お届けするfukunomoは、これから迎える梅雨空の6月に相応しい、雨模様の中にも爽やかさを感じさせるようなセットです。
今回のお酒を醸す仁井田本家さんは非常に歴史のある酒蔵で、創業からすでに300年以上の伝統を誇ります。
そんな仁井田さんがこだわっているのは、「自然」の力を引き出すこと。お米は化学肥料や農薬を全く使わない自然米のみを使用し、水も全て天然水。(ちなみに、あぶくま高原地域は東洋一の鍾乳洞といわれる「あぶくま洞」があるほどに石灰岩層が多く、自然の力で濾過されたものすごく美味しいお水が採れるんですよー)
製法も非常に手間がかかる、自然由来の乳酸菌を生かした昔ながらの生酛造り(これを今もやっている蔵は本当に少ないです)と、白麹(しろこうじ)を使ったものの二種類。ここまで自然由来のものばかりにこだわり抜いた酒蔵は、なかなか稀有な存在なのです。商品に関わる素材の全てが「オーガニック」と呼んで差し支えないのではないでしょうか。
今回お届けするお酒は、その中でも白麹を使った特に飲み口の良い、最近人気の純米吟醸「穏」。メロンのような芳香を持つ、自然の風味を引き出した上等な無濾過酒です!
・「穏」純米吟醸
今回お届けの「穏」純米吟醸。これをコーヒーでたとえるならば、まるでブルーマウンテン。あるいはモカ・マタリのような、上等な香りとなめらかで深い味わいが特徴的な、気品あふれるお酒といえます。
白麹由来の特有の豊かな香りと爽やかさ、そして仁井田本家さんが得意とする「自然の底力」のようなものが最大限に引き出された、生命力溢れる滋味、力強さとが絶妙な調和をしています。
極めて香り高く上品ではあるものの、それはあくまでも穏やかな自然味ある香気で、食前酒のみならず食中酒としても非常に秀逸。「香り高い食中酒」というのは、とても貴重なお酒であります。
清廉な清水のような透明感と滑らかなのど越しがありつつも味わいの輪郭はハッキリしており、アクセントとなる酸味も夢見のように心地良い。中盤には沁み入るような旨味のしなやかな伸びとふくらみを感じさせ、奥深いコクがじわじわと口のすみずみまで広がっていく。
後味には、まるでクラシック音楽のホールで感じるような、音と音、楽章と楽章の狭間に感じる、絶妙な「間」と凄みのある静寂。「息遣い」のような気配。そして臨場感。
芳醇な香りの余韻が、まるで淡雪が融けるかのように静かに消えて、最後にはこれも非常に穏やかな多幸感が残される。このイメージは、さまざまな楽曲の中でもモーツァルト的な印象かな。
このお酒と過ごすひとときは、まさに協奏曲を愛するかのような時間のよう。それぞれの楽章、シーンごとに、さまざまな表情とその魅力に酔わせてくれます。
では、いよいよこれを今月のペアリングと合わせていきましょう!
今月のマリアージュ/ペアリングセットは
※写真は2016年6月のものになります。
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- 三春三角油揚げ<福島県三春町/有限会社大畑屋食品>
- 会津産アスパラガス<福島県/会津の農業生産者の皆様>
- 里の放牧豚 粗挽きウインナー<福島県郡山市/ふるや農園>
- トマトジュレ<福島県伊達市/有限会社八島食品>
- 5種の白ワインピクルス<福島県伊達市/有限会社八島食品>
・三春三角油揚げ
新潟県の栃尾や宮城県の定義山、福井県の竹田、愛媛県松山あげのように、全国には名物となる油揚げがいくつかありますが、その中の一つが三春の三角油揚げ。国産大豆を原料に使った逸品です。
三春町は「三春の滝桜」で有名な、あぶくま高地の城下町です。征夷大将軍坂上田村麻呂の子孫だといわれる「田村氏」の本拠地であり、伊達政宗公の正室である「愛姫(めごひめ)」の実家でもあります。
冷涼なこの地では春の訪れが遅く、ようやく暖かくなったころに梅、桃、桜という春を告げる三つの花が全て一斉に咲くことから「三春」という地名が付けられたという説もあるのだとか。
この油揚げは以前にもfukunomoで届いたことがあるのですが、普通に油抜きをして料理に使っても美味しいのはもちろん、こんがりトーストしても美味しいし、なんならそのまま食べてもしっとりとした味わいと素材の旨味を堪能できます。
お土産品としても喜ばれる一品ですが、日本酒のアテとしても非常に使い勝手が良いですね。このジューシーな味わいは、普段からの食事やペアリングはもとより、深酒してくたびれた身体にさえも、とても美味しい。クセになる一品です。
・会津産アスパラガス
この季節ならではの福島の旬の味覚。これも「知る人ぞ知る」のですが、福島県は国内有数のアスパラガスの名産地でもあります。里山が多いこの地域は、「山菜の一種」という感覚で、アスパラがとにかく美味しい。
この産地直送の旬の味わいは、実際のところどういう風に食べても美味しいのですが、今回は敢えて意外なところを狙って、エスニック風の味付けで炒めてみちゃいます。
今回使った調味料は、ベトナムの「サテトム」。エビとナンプラー、ニンニクを合わせた旨味とレモングラスの爽やかさが魅力の、ちょっぴり辛い万能調味料です。
実は、この初夏にも似合う仁井田本家「穏」は、エスニック料理との相性も抜群。別の連載記事で「エスニックにも合わせられる日本酒」として、「穏」の夏酒を実際に合わせたこともありました。
「穏」が持つ白麹由来の香りは、エスニック風味に合わせてもとっても引き立ちます! お酒のさまざまな可能性を引き出して楽しんでみるのは、ペアリングの醍醐味でもありますね。
・里の放牧豚 粗挽きウインナー
仁井田本家さんとご近所さんでもある、ふるや農園放牧豚の粗挽きウインナー。皮をかじると、パリっと…というよりも、むしろミッチリ詰まった粗挽き肉の肉質感が印象的です。
素朴ながらも、自然の「滋味」を感じさせるとても力強い濃縮された旨味。しかし、決して脂の強さで攻めてくる感じではなく、肉そのものの旨味を強く感じさせます。保存食としての加工肉を食べたというよりも、最高の瞬間のために選び抜いておいた豚肉の旨味、いいところを凝縮させた「とっておき」というべき味わいです。豚肉のウインナーでありながらも、まるで牛肉のフィレ肉の中でも最高級部位と言われるシャトーブリアンをイメージさせます。
それもそのはず。このふるや農園の放牧豚は、旨味と甘味を備えたアミノ酸の一種であるアラニンが、成分比較検査(日本食品衛生協会調べ)では、一般的な豚肉の2倍以上も含まれているというのです。地元でもなかなか手に入らないほど生産量が限られている中でさえ、このウインナーが楽しめてしまうのはやはり、fukunomoならでは。
ご近所であることも相まってですが、仁井田本家さんのお酒、特に「穏」との相性は抜群です。この旨味と爽やかさの調和が、ペアリングとしても実に絶妙に楽しめます。
・トマトジュレ
・5種の白ワインピクルス
そして最後に、箸休めとしても重要なトマトジュレと5種の白ワインピクルス。
特に今回はお肉や油の風味、香りの強さを感じるおつまみが多かった中で、このトマトジュレは、冷やしトマトのフレッシュ感をそのままに、よりジューシーに。まるで生野菜をより理想的に洗練させていったかのよう。「生野菜より美味しい生野菜」とでもいうべきでしょうか。
5種類の白ワインピクルスは心地よい酸味と爽快感が、お酒の酸味とも合わさって、とても心地よい箸休めとして使えます。こういう緩急使い分けるおつまみのチョイスが、まさにfukunomoの良いところでもあります。最初から最後まで、とても良い組み合わせでした。
久しぶりのfukunomoでしたが、体感してみると、特に最近の新型コロナウイルス騒動で滅入りがちな日常の中に、心地よい一抹のそよ風が入ってきたかのようでした。
これは、昨今の自粛ムードの中だからこそ余計に「響く」ところもありますね。ぜひ、少しでも多くの方にこの楽しみを、幸せをおすそ分けしたいところです。
今月も、ごちそうさまでした!(∩´∀`)∩
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