今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
【連載第45回目】
5月になって、福島も一気に春らしさで溢れてきました。
山あいでも菜の花が咲き誇り、絶好の行楽シーズンですね!
さて今月の1本は、福島最南端に位置し、久慈川沿いにある矢祭町から届いた地酒「南郷」。
矢祭町は、北は宮城県から福島県を縦断して茨城県北部まで連なる阿武隈高地の南部、茨城県との県境に位置した人口5500人あまりの町です。
町内を流れる久慈川は福島・茨城両県にまたがる八溝山を源流とした清流で、この川の上流地域は茨城県内で「奥久慈」と呼ばれ親しまれる、豊かな自然を生かしたブランド力のある地域。日本有数の鮎の釣り場としても有名です。矢祭町でも、漁の解禁時期になると多くの釣り人たちが町へとやってきます。県境を挟んだお隣の茨城県大子町は奥久慈シャモやリンゴ「日本三大瀑布」の一角である「袋田の滝」が有名です。
こうした自然の恵みと歴史・文化豊かなこの奥久慈の町で、天保4(1833)年から代々続く、今回の「南郷」の酒蔵。実は割と最近まで「藤井酒造店」という蔵元の名前で、「矢澤酒造店」と名前が変わったのは2016年末のこと。
代表取締役社長である矢澤さんは、かつて東京で飲んだこの「南郷」の絶妙の味に惚れ込み、ついには縁もゆかりもなかった福島県矢祭町に移住して酒造りを継いでいます。「南郷」は一人の人間の人生を変えてしまうほどの魅力を持った、まさに隠れた銘酒と言えるでしょう。早速、今月も味わっていきましょう!
■今月の美酒
・南郷 純米酒 <東白川郡矢祭町/株式会社 矢澤酒造店>
最初に感じるのは、福島県内きっての冴えわたるキレの良さと清々しさ。これは県南の酒の特徴とも言えるもので、非常に心地よい口当たり。しかし次の瞬間、「福島の酒」に共通するやわらかな「ふくみ」のような後引く旨さを強く感じさせてくれます。スッキリしているのに荒々しさは無い。やわらかな旨味があるのに決してしつこくない。味わう中で表情を少しずつ変えて飲み飽きさせず、後味には再び最初に感じさせたような淡麗さとキレ、わずかな酸味が残される。
それらはまるで、冬から春への雪解け。乾いた大地に清廉な雪解け水が沁み渡るかのような躍動感から始まり、やがてあたたかな陽差しに小さく可憐な花が次々と芽吹き開いていくようでもあり。
この設計はおつまみを選ばない理想的な食中酒と言えるもので、どんどんお酒が進みます。山のお酒でありながら、新鮮な刺身などの海の幸とも非常に良い相性を誇ります。実に懐が広く、ぜひともおすすめしたい銘酒ですね。
■今月のマリアージュ/ペアリングセット
・福島牛カレー
<福島県郡山市/株式会社ビーフふくしま>
・郡山謹製 豚味噌漬け 極熟 合わせ味噌
<福島県郡山市/株式会社鈴畜中央ミート>
・ひらめ塩辛
<福島県相馬市/有限会社海鮮フーズ>
・グリーンオリーブ
<福島県伊達市/有限会社八島食品>
・やまきちの温体野菜 黒胡麻れんこん
<福島県伊達市/山吉青果食品株式会社>
・福島牛カレー <福島県郡山市/ビーフふくしま>
続いて、ペアリングも楽しんでいきましょう。
最初は「福島牛カレー」。日本酒にカレー??と思われるかも知れませんが、これは蔵元さんイチオシの組み合わせとのこと。香りと風味を楽しむという点では、実はカレーとお酒には通じるところもあるわけです。洋風カレーには「赤ワイン仕立て」なんてのもあるくらいですから、日本のカレーには「日本酒仕立て」というのもアリかも知れませんね。
中でも、この福島牛カレーは福島牛由来の風味、そして脂の旨味と甘味がとても強い贅沢仕立て。ここにお酒と合わせると、不思議なほどクリーミーでまろやかな味わいになってクセになります。
少し考えてみれば日本酒の材料はお米ですから、お米の旨味とカレーが合わない訳がないのです。意外性がありつつもすんなりと美味しく頂けちゃいます。
・極熟合わせみそ <福島県郡山市/鈴畜中央ミート>
続いては、豚肉の極熟合わせみそ。かの有名なサッカーの元日本代表で、現在は日本酒の需要振興事業も手掛けている中田英寿さんオススメのマリアージュとのこと。
今回は、これを手元にあった野菜と一緒に炒めてみます!
福島の酒は、ふくよかでジューシーな旨味が口の中いっぱいに広がるのが特徴の一つ。こうした肉汁や味噌の旨味と合わせることで、肉汁が口の中で一気に増えたかのような食味に変わります。素材が持つ旨味をよりジューシーに引き出してくれて、味噌の香ばしさもより強化される。これは秀逸なおつまみですね!
・ひらめ塩辛 <福島県相馬市/海鮮フーズ>
さらに続くのは、ひらめ塩辛。塩辛といえばイカが思い浮かびますが、ひらめを塩辛にしたものは少し珍しいですね。
何より、福島県の海の幸といえば高級料亭などでも重宝されているという「常磐もの」。その代表的な高級魚の一つがひらめです。これは期待が高まります!
いざ口にしてみると、驚くほど凝縮された旨味と、ねっとりとした滑らかな舌触り。まるで神経〆して熟成させた刺身を食べたときのような濃厚な食感です。
これを単品で食べると少し塩気が「濃い」印象が先立つものの、しかし。塩辛の本領は、やっぱりお酒と合わせてこそ。特に、山のもの海のもの双方に好相性を魅せる「南郷」と合わせると、この塩辛が絶妙の味わいに変わります。南郷の強いキレで余分なニオイを切り、その後は酒の中にジューシーな旨味が、これでもか!と滲み出て沁み渡ります。
しかも塩気が少し強いからこそ、少量を口にするだけでもかなりの満足感。長く楽しめるので、ちょっとお得感もあります。
・グリーンオリーブ <福島県伊達市/八島食品>
・黒胡麻れんこん <福島県伊達市/山吉青果食品>
最後は、同じ伊達市からのグリーンオリーブと黒胡麻れんこんをそれぞれに合わせてみます。
これらはいずれも、今回ご紹介したこれまでの「濃いめ」の肴の箸休めになるのみならず、食事全体に緩急や味変のアクセントをつけてくれる優れものです。
八島食品さんのグリーンオリーブは、綺麗な粒揃いの上等なオリーブを風味豊かに仕立てられた逸品。オリーブの香りが「南郷」の持つ穏やかな香りと交じり合います。しっとりしたオリーブの果肉は、梅酒漬けの梅にも似た感覚で楽しめますね。
一方の黒胡麻れんこんは、シャキシャキ食感と胡麻の香ばしさが特徴的。オリーブとはまた違った香りと食感のアプローチで、南郷の魅力を引き立ててくれます。これらのアクセントを少しずつ挟みながら楽しむと、今回のペアリングセットは実に様々な表情を見せてくれるのです。
今回は、東北最南端の矢祭町から「南郷」のお届けでした。このキレの強さとふくよかさの絶妙なバランスは、福島の、特に県南地方のお酒に見られる魅力です。
福島のお酒は、その多様性が魅力。広い県内でもそれぞれの地域によって同じ県内とは思えないほどに個性に違いがあり、しかもそれぞれがそれぞれの方向を生かしつつ非常にハイレベル。
ところが、その多彩な魅力を地元以外で味わうことは、たとえ県内在住であっても実はかなり難しいのが現状。広い地域ごとに多様な個性がある…というのは、大量出荷や安定供給に向かないということと表裏一体なのです。
fukunomoは、そんな福島秘蔵のお酒を厳選した上で、毎月、みなさまのお手元へとお届けしています。毎月届く「新しい!」「美味しい!」「楽しい!」の発見を、これからも楽しんで頂ければ幸いです。ぜひ、身近な方も誘ってあげてくださいね!
今月も、ご馳走様でした!(*´▽`*)ノシ
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