伝統と新しさが生む 日本が誇る酒。人気酒造《福島県二本松市》 - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

伝統と新しさが生む 日本が誇る酒。人気酒造《福島県二本松市》

十代表取締役社長 遊佐 勇人(ゆさ  ゆうじん)さん
1965年生まれ。大学卒業後、テレビドラマ制作に携わり、1990年に
奥の松酒造に入社。2007年に人気酒造を設立。海外展開に力を入れており、
50カ国以上へと販路を広げている。                                  

戦前から遊佐家にあった銘柄「人氣」を復活させ、2007年に設立した人気酒造。

設立からまだ二十年も経たない新しい酒蔵は、「今までになかった酒を造ろう」と決めています。

ですから、そのラインナップはバラエティに富んだものばかり。
オーガニック日本酒、スパークリング日本酒、ワイングラスで飲む日本酒、
「ウルトラマン」とコラボレーションした日本酒シリーズ……。
これまでの日本酒のイメージにとらわれない人気酒造の酒は、
日本酒に縁遠かった若い世代や、海外の人たちを惹きつけています。

「日本酒は日本の誇り」と語る遊佐社長にお話を伺いました。

今までになかった酒を

人気酒造の設立は2007年。同じ二本松市の酒蔵で経験を積んだ遊佐さんが立ち上げました。福島県内でもとりわけ若い酒蔵。目指すべき方向を考えた遊佐さんは、「新しさ」という答えにたどり着きました。

「福島県には、長い伝統を持った酒蔵がたくさんあります。伝統的なお酒は私たちが造らなくてもいいでしょう。それならば、新しいもの、今までになかった酒だけを造ろうと決めました」

 ワインの世界では当たり前になっているオーガニックへの挑戦。香りをより楽しめるよう、ワイングラスで飲む日本酒という提案。遊佐さんは次々と新たな取り組みを始めました。

 そして、新しい酒蔵ならではの特徴が「四季醸造」です。一般的に、日本酒は冬から春にかけて造られます。気温が低いため品質管理がしやすく、農閑期で人手が確保しやすかったことから、「寒造り」が当たり前になったためです。しかし、「真夏にしぼりたて飲みたくないですか? 温度管理が万全にできる設備があれば、冬だけ造る必要はありませんよね」と遊佐さん。

「海外へ行くと、改めて日本の文化を知ることができるんです。日本人は本当に『出来立て』が大好きなんですよ。それなら、とことん鮮度にこだわろうと」

 そう、人気酒造では、春に限らずいつでも搾りたての日本酒を飲むことができるのです。遊佐さんいわく、「真夏に飲む搾りたての味はたまりません!」。

受け継がれてきた木桶の技術

新しい酒造りを追求する遊佐さん。しかし、決して伝統をないがしろにしているわけではありません。むしろ、造りは伝統を踏襲しています。そのひとつが木桶です。ステンレスやホーローのタンクが主流になる中、あえて木桶を選択。今や鑑評会出品酒以外はすべて木桶で醸されています。

「木桶に使う木材は、自然のものではないんですよ。植林をして、伐採をして、人の手で育て上げられたものなんです。優れた木桶になる樹齢100年の木材が生まれるには、400年もの年月が必要なのだそうです。恐ろしいほどの手間ひまをかけた技術が脈々と受け継がれてきたことに感動しました。未来へ繋ぐ酒造りには、木桶が欠かせないと思ったんです」

 今月お届けした『グリーン人気オーガニック 純米吟醸』も、もちろん木桶で醸されています。400年もの年月に思いを馳せて、じっくり味わってみてください。

日本酒は日本の誇り

日本酒の歴史はおよそ2000年。紀元前8000年に始まったワイン、紀元前4000年に始まったビールはと比べると、かなり新しいお酒です。その魅力について、「日本酒はものすごく人工的なんです」と遊佐さん。

「日本酒は水と米から出来ていますが、自然に生まれるものではありません。わざわざ人間が蒸して麹を造ったり、加工しないと酒にならないのです。気候も高温多湿の日本ならではです。そこに、手間ひまをかけた木桶を使っている。日本人が生み出した、本当に複雑で高度な酒なんです」

 その名の通り、日本酒は日本の誇り。その魅力を世界へ発信してゆくべく、海外展開に力を入れている遊佐さん。今や、50カ国以上へ輸出しています。伝統的な手法を用いて、これまでになかった新しい酒を造る―。まだ見ぬ人気酒造の日本酒に、期待が高まるばかりです。