この酒には、南会津の美しい自然を、情景を、瑞々しい感性で描写したような味わいがある。(2023年5月|開当男山酒造) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

この酒には、南会津の美しい自然を、情景を、瑞々しい感性で描写したような味わいがある。(2023年5月|開当男山酒造)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第57回目】

「山もとの鳥の声々明けそめて花もむらむら色ぞ見えゆく(永福門院/玉葉和歌集)」

京極派の和歌。印象派の絵画。あるいは、アールヌーヴォーの曲線美。
この酒には、南会津の美しい自然を、情景を、瑞々しい感性で描写したような味わいがある。
口に含んだ瞬間からほとばしる、メロンや白桃を思わせる鮮烈な香りとジューシーな甘味。ただしキレは良く、芯の強い旨口がほどなく滲み出てくる。「旨口ながら重すぎず、とめどなく飲み続けられる理想的なバランス」という、この地域の酒に多い特徴を最大限に生かした味わいが実にたまらない。この個性が、秀逸な食前酒と食中酒という二つの表情をこの酒にもたらしてくれる。

一口、ふたくちと啜るほどに立つ、寄せては返す華やかな香りとたおやかな旨味。それは明け初める鳥の声々であり、色が見え行く花の群生。まさに南会津の多彩で豊かな自然が織り成した調和を見るかのよう。飲む程に、新緑を濡らす慈雨が心身に沁み込むかのような感覚になる。

もっとも、自然とは本来、これほど優しく洗練・調和されたものではない。
それでも、「自然」のやわらかな抱擁をこれほどまでに感じることに、「藍より青し」の言葉が過ぎる。青の染料は藍草から作られるが、原料の藍草よりもずっと青い。

断言しよう。この酒は、南会津の自然を、その魅力と美しさを取り込み、決して「ありのまま」では得られない次元にまで昇華・再構築させている。それが、この酒を冒頭のように喩えた理由でもある。

まさに「南会津」を芸術で表現したような、見事な一本。飲む者の感性を震わせる深い味わいと、価値ある瞬間を約束してくれるだろう──。

■今月の美酒

・開当男山 特別純米酒 夢の香<福島県南会津郡南会津町/開当男山酒造>

フルーティーな甘さとお米の香ばしさを堪能できる一本。
複雑な旨味と酸味があり、様々な温度帯で楽しめます。
風味が豊かで、発酵食品とも好相性です。

開当男山酒造の歴史は古く、享保元年(1716)創業。名前の由来は創始者の3代目渡部開当(わたなべはるまさ)がそのまま銘柄となっているとのこと。しかし蔵の名前は「はるまさ」ではなく「かいとう」と読みます。

先ほどもお伝えしたように、南会津の酒は全般的に「旨口ながら重すぎず、とめどなく飲み続けられる理想的なバランス」が身上のお酒が多く、多くの酒呑みを虜にして止まない銘酒を数多く出し続けてきました。今回も、まさに絶品! の一本。早速、楽しんでまいりましょう!


勝手にペアリングコーナー

今回も、最初に先入観無くお酒を楽しんだ上でのペアリングを考えてみましょう。

まず、このお酒は色んなものに合わせられる万能酒。懐が広いのでだいたい何でも合わせられちゃうね。敢えて言えば、おつまみも酒の歩調に合わせるように「ジワジワと噛めば噛む程旨味が出てくる」系が良い気もする。
その相性を考えて最初に食べたいなと思ったのは「淡白な中にもじんわり旨味が滲み出てくる」点で鶏肉。特に、旨味が強い地鶏とかシャモとか出てきたら特別なご馳走感があるよね。セミドライや乾物でもいけるかも。それでいくと、鶏肉に限らず燻製なんかも全般的に結構いけるんじゃないかと思うんだよね。

魚の場合、(最近連続になってるけど)やはり白身系の味わいが良いとは思う。他にも、たとえば最近常磐もので水揚げが増えてきたタチウオなんかも意外性あって面白そう。
他には魚介類の場合、噛めば噛む程でイカやタコの加工品とか?

他には、かまぼことかも良さそう。たとえば、以前に頂いたおのざきさんの『プリっと寝かせ揚げ。』とか、脂の旨味と淡白でじわじわくる旨味、食感の優しさとかで相当いけるのでは。

スパイス系をアクセントに使うのも面白そう。使い方次第だけど、「おっ」と思わせてくれる気が利いたペアリングになる気もするね。唐辛子の風味も合うかも。

脂の甘味にも普通に合いそう。シンプルに焼鳥とか、その辺りと合わせてもいいよね。口の中で脂のジューシーさと果実を思わせるジューシーな風味が混じり合って、とにかくジューシーになる予感が。
なので、焼鳥に合わせて一味唐辛子を一振りとかのイメージ?
芯が強い酒は唐辛子も心地よくいなしてくれるけど、美味しいだけでなくペアリング的な風味の変化も感じさせてくれるはず。もっとも、あんまりかけすぎると舌がひりひりして味を楽しめなくなるので用量には注意。いっそ会津名産だし、辛味噌とかが味加減の上でもバランス良いかも?馬刺しとかに合わせるやつ。美味しいと思うよ??

あ、チーズは普通に合うね。メロンや白桃のような香りなので、モッツァレラチーズとかも良い感じ。そこにレモンやライム風味を加えてあげても良いかな。
さらにメロンや白桃のような香りということで、甘味はたとえば若桃の甘露煮とかどうかな。季節感もあるし、風味の相性も良さそう。

美味しいお酒なので想像が捗ってしまいましたが、そろそろ実際のfukunomoメニューと合わせていきましょう♪


■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・伊達鶏柚子味噌漬け <福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>
・ホタルイカの塩辛 <福島県福島市/平和園>
・おそうざい 国産胡麻ごぼう <福島県伊達市/株式会社ヴィルタス>
・福虎の だしのきいたゆでたまご <福島県福島市/株式会社福虎>
・カリントまんじゅう <福島県石川郡石川町/株式会社お菓子のさかい>

・伊達鶏柚子味噌漬け <福島県福島市/福島県流通ネットワーク協同組合>

まず最初は、伊達鶏胸肉の柚子味噌漬け。

来ましたコレ!福島が誇る銘柄鶏「伊達鶏」じゃないですか。!
前述の《勝手にペアリングコーナー》で書いた通り、『最初に食べたいなと思ったのは「淡白な中にもじんわり旨味が滲み出てくる」点で鶏肉。特に、旨味が強い地鶏とかシャモとか出てきたら特別なご馳走感がある』はい、ご馳走確定です。fukunomoコメントでは『胸肉なのにやわらかしっとり。上品な柚子味噌がお酒とまろやかに調和』 はい、まさに仰る通りです。鶏の胸肉ってどうしても少しパサつく感じになりやすいのですが、そこをカバーするのが地鶏の良さ。優しい口当たりながらも、じんわりと旨味が滲み出てくるのです。
さらに、柚子味噌風味が沁み渡っていることで、旨味に更なる「たおやかさ」が生じている。まさに、今回のお酒がもつ旨味とリンクする風味なので心底美味しいです。いや、これは良いですね!

・ホタルイカの塩辛 <福島県福島市/平和園>

続いては、ホタルイカを使ったキムチ仕立ての塩辛。
これも、噛めば噛むほど旨味が出るイカ、特にコクが強いホタルイカを更に旨味たっぷりの塩辛にした上、唐辛子が意外性を出すアクセントにもなる一品。まさに、「欲しかったペアリング」そのものです。今回のfukunomo、やっぱりご馳走感が凄い。
なお、fukunomoコメントとしては『韓国風塩辛。蔵人からは「口内の滞在時間が長く、良い余韻」と好評でした』。 そうでしょうとも。開当男山の酒自体が、まさにそういう旨味の滞在時間と余韻をとめどなく味わい続けられるのが魅力。お酒の長い旨味の余韻に肴が足並みを揃えることで、まるで楽器のハーモニーがホールにいつまでも反響し続けるような陶酔を味わえます。

・福虎の だしのきいたゆでたまご <福島県福島市/株式会社福虎>

次は、『福虎のだしのきいたゆでたまご』。fukunomoコメントによると、『味付きゆでたまごだと半熟がトレンドですが、くんせい工房らしく固ゆでたまご。黄身のホロホロ具合とお酒の相性が◎』とのこと。
ふむふむ? と思って実食してみると、おお! なるほど。
確かに、最近では売り物としては珍しくなったハードボイルド。ただ、名前の通りに出汁がきいているので、半熟よりもしっかりとした旨味が光る。
南会津の酒全般には、こうした熟成感あるしっかりした味わいも非常に好相性。もちろん今回のお酒もご多分に漏れず。むしろ、一口目の華やかさが加わることで王道ペアリングに更なる煌めきのようなものまで加わっている。敢えてのハードボイルドを選ぶ選択、中々に効果的です。

・おそうざい 国産胡麻ごぼう <福島県伊達市/株式会社ヴィルタス>

fukunomo曰く、『蔵人がお気に入りだった一品。ごぼうのワイルドな香りと甘辛な味付けがお酒とベストマッチ』。
そういえば南会津は豊かな山の幸が採れることもあり、山菜類など独特の香味を持つ野菜との相性が良いお酒も多かったりします。そこに、ごぼうと胡麻の風味。さらに、さきほど同様に唐辛子のアクセントを入れた甘辛仕立て。いやこれは絶対美味しい。まさにベストマッチと言える美味しさでした。

・カリントまんじゅう <福島県石川郡石川町/株式会社お菓子のさかい>

今回の甘味は、カリントまんじゅう。
実は隠れた福島銘菓でもあるカリントまんじゅうですが、満を持してのfukunomo登場ですね!
お馴染みの味ですが、お酒と合わせてみると表面の焦がしの香ばしさとほろ苦さ、そして甘いあんこ、生地のしっとりした口当たりと甘さが非常に好相性。
『fukunomo編集部・松岡のテイスティングメモに「かりんとうとの相性◎、和菓子も」とのことで試したところ良かったペアリング。あんこ×かりんとうの良いとこ取りができました。お燗と合わせても美味!』 とのfukunomoコメント。なるほど、カリントまんじゅうを合わせる発想は思い付かなかったなあ。「お燗と合わせても美味!」これは間違いない。さすが!

やっぱりfukunomoは、自分だけでは思い付かない発想や新しい楽しみ方を毎月教えてくれるね。続けている甲斐があるというもの。今月も、美味しく頂きました!


今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?

fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。

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申込期限2023年5月15日(月)まで

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