歴史ある手法を受け継ぎ、手仕込みにこだわった日本酒。
その日本酒を用いたスパークリングや梅酒、リキュールなど、
幅広いラインナップを誇るのが豊國酒造です。
五代目の髙久禎也さん・六代目の功嗣さん父子は、ともに新しいことをするのが大好き。
「同じことばかりしていると、飽きてしまうんですよ」と笑います。
お二人の挑戦の成果が、バラエティ豊かな商品群に表れています。
前回お話を伺ってから、およそ二年。
今の豊國酒造は、どんなことに取り組んでいるのでしょうか。
蔵と同じ名の酒米「豊国」
最近の新しい試みは、酒米づくり。蔵と同じ名前の酒米「豊国」の栽培に取り組んでいます。酒米「豊国」の存在を知り、種を10グラムほど入手してから、およそ3年が経ちました。同じ品種の中でもより強いものを選別し、今年の栽培がうまくいけば、ようやく商品化できるのでは……というところまできました。
「名前に縁を感じて栽培を始めたので、どんな味かはわからないんですが」と笑う禎也さん。「それでも、新しいことをやりたかったんです」と続けます。
「酒の味が良くなるなら、新しいことができるなら、変化をためらわない―という姿勢は昔からずっとありますね。それがうちの蔵の特徴であり、強みだと思います」と功嗣さんも語ります。
酒造りの“前後”とは
功嗣さんいわく、酒造りで大切なことは二つ。一つは、原料である米の性質を理解すること。もう一つは、道具の洗浄や蔵の清掃など、衛生面だといいます。
禎也さんは、衛生面が「酒造りそのものよりも大事です」と話します。「やり方がなってないと、酒の味にすぐ現れます。ただ、実践するのは簡単ではありませんが」
「社長がずっと言っていたんですが、以前は全く理解できていなかったです」と功嗣さん。「設備は古くても、隅々まで綺麗にしておくことがどれだけ大切か―。そんな基礎もできていないのに酒造りを語るなよ、と過去の自分に言ってやりたいです」
功嗣さんは、五代目の意向を造りに反映すべく、蔵人との調整役を務めています。「造りはもちろん、細かな清掃まで考えると、私たちだけではとても手が回りません。だから蔵人の力が必要なんです。少しずつではありますが、年々着実に酒質が良くなっているのを感じています」
そんな環境で造られたお酒をお届けしました。『純米酒 豊国 袋取り』は、福島県オリジナルの酒米「夢の香」を使っています。米の旨みや甘みをしっかり感じられる一方で、すっきりとした味わい。気温が上がってくるこの季節に、爽やかな気持ちにしてくれそうです。
地元の皆でものづくりを
取材に同席していたのは、豊国酒造の蔵人であり、同じ会津坂下町で農業に従事している佐藤裕司さんです。
「一度町を出ましたが、地元の坂下町がすごく好きなので、必ず戻ってくるつもりでした。坂下には、“格好良いお隣さん”がたくさんいるんです。そういう方々と一緒に町を盛り上げていきたいですね」
30歳で町に戻ってきた功嗣さんは、「当時は、田舎で何にもない町だと思っていましたね。もちろん今はそんなこと思っていませんよ(笑)」とのこと。「佐藤くんをはじめ、ものづくりをしている人がたくさんいます。つくるものは違えど、刺激を受けられる恵まれた環境にいられることがありがたいです」
伝統工芸品である「会津木綿」のブランドとコラボして、日本酒のラベルがコースターになるというユニークな商品開発も実現しています。会津坂下町が誇る酒蔵のこれからに、ぜひご注目を。