王道や従来の枠にとらわれず、「旨い酒とは何か」の根源と本質を問うかのような酒。(2023年8月|合資会社辰泉酒造) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

王道や従来の枠にとらわれず、「旨い酒とは何か」の根源と本質を問うかのような酒。(2023年8月|合資会社辰泉酒造)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第60回目】

酒は、文化だ。
酒には、それぞれの地域と歴史に育まれた無二の個性がある。
つまり酒を嗜む行為とは、それら多様な文化を感性に直接叩き込むに等しいというのが持論である。
香りが、色合いが、舌触りが、多彩な風味が、あらゆる感覚を刺激する。知識や記憶、インスピレーションを呼び醒ます。その逆に、渾沌とした微睡みや忘却をもたらすこともある。

これはある種、芸術を鑑賞するにも似た体験かも知れない。
芸術が文化の延長にある以上、酒もまた、芸術に成り得ると言えるだろう。

特に、近年の日本酒には目を見張るような進化もみられる。
高い技術と伝統の文化に裏打ちされた、自由かつ多様な表現。現代の日本酒はまさに、芸術を生み出す潮流の中にあると言っても過言ではない。

そうした中、今回の「辰泉 プリミティヴ」はその名の通りの「プリミティヴ・アート」(概念的な「自然・原初状態」、あるいは既知の文明とは異なる美意識や技法、価値観が織り成す「新しい」芸術)を彷彿とさせる。
王道や従来の枠にとらわれず、「旨い酒とは何か」の根源と本質を問うかのような酒。
素材のあらゆる持ち味を最大に生かした技法は、福島の酒が得意とする「雑味を旨味に変える」本懐をさらに進化・体現させたかのよう。

かつてピカソやゴーギャンも惹かれたという「プリミティヴ・アート」。未知なる魅力を体現したかのような野心作は、心躍らせ、魂を震わせる。五臓六腑に沁み渡る。
この新鮮な感動こそ、次世代を創る新しい文化と芸術の萌芽と言えるのかも知れない。

辰泉酒造と言えば、「京の華」。大正時代生まれの古い酒米の品種です。
辰泉酒造さんは昭和55年、福島県農業試験場に僅かに残されていた僅か200gの種籾を手にこの酒米の栽培を開始。「京の華」は、今や蔵の代名詞とも言える看板酒米となりました。

「山田錦」「雄町」「五百万石」「八反錦」「美山錦」「亀の尾」「愛山」、福島ではオリジナル品種「夢の香」「福乃香」など多用な酒米がある中、栽培が難しく収穫量も少ない、醸すにも癖が強く扱いが難しい「京の華」を使い続ける酒蔵は、辰泉酒造以外にほぼ見かけません。まさに「幻の酒造好適米で醸した酒」と言えるでしょう。
その味わいは、淡い香りの中にコクと旨味が際立つ力強い風味。昔ながらの日本酒らしい魅力を引き出しやすい特徴を持っています。これをさらに、「プリミティヴ」に仕立てているとのこと。どんな味になるのか、楽しみで仕方ありません!

早速口にしてみると、炊き立ての米を口の中で何度も噛みしめたときに滲み出てくるような甘味が印象的。まさに「豊穣の穀物」を感じさせる。しかし、それも強すぎず、続く柔らかな酸味がとても心地良い。敢えて精米歩合を抑え目にした味わいは、昔の酒米である「京の華」の力強さと非常に相性が良い。酒米も含めて原点回帰というか、まさにプリミティヴな日本酒の魅力を追及した酒と言えるね。

一方で、精米歩合の割に非常にクリアで純粋な旨味を感じることもできた。一般的には雑味と呼ばれる一つひとつの風味はあるのに、それらが想像を超える次元で調和して、結果「雑味が無い」かのような感覚になる。福島の酒が持つ、「雑味を旨味に変える妙技」が非常に上手くフィットした感じ。「プリミティヴ」と言っておきながら、全然粗野な感じも古臭さもない。この味を「昔」への回帰と呼ぶなら、それはもう「失われた古代文明の超技術」とでも呼ぶのが相応しい。非常に旨い。

なるほど、最近は敢えて精米歩合を抑えた酒も増えてきたものの、この味わいは「京の華」を持つ辰泉さんならではの野心作。とても面白い。こんな酒をいち早く体験できるのは、やっぱり、fukunomoをやってる特権みたいなものだね、これは。ぜひ、多くの人にこの幸せを分かち合いたい。

■今月の美酒

・辰泉(たついずみ)プリミティヴ 純米80 2023 <福島県会津若松市/合資会社辰泉酒造>

甘くまろやかな風味が印象的な一本。
複雑な味わいの構成が様々な料理を引き立てます。
あえて燗でいただくとリッチな味わいが楽しめます。

勝手にペアリングを考えてみた

まずは、いつも通りに第一弾は《勝手にペアリング》から。手元にあったおつまみを、このお酒に色々合わせてみました。

・和風キムチ
少し和風が入ったまろやかなキムチ。これが意外とマッチ。甘くまろやかなダシの旨味と口当たり、辛すぎない程度の唐辛子風味が、お酒が持つ「炊き立ての米を何度も噛みしめたときに滲み出てくるような甘味」と非常にマッチ。「やや甘さ強めの甘じょっぱい」との相性が良いのかもしれない

・ふきのとうしょうゆ
これはあまり合わない。強い苦味と塩気で甘さが打ち消され、相殺されて味に空白地点が生まれてしまった。以前の「豊國酒造さん(会津坂下町)の『豊國 純米酒 袋取り』」との合わせでは絶妙なバランスの旨味が楽しめたのだから、ペアリングは面白いね。

・虎豆の煮物
虎豆のとろっとした口当たりと甘さ、豆の食感が非常に良く合う。やはりこの酒、酒が持っているやわらかな甘味に便乗してうまく生かしてくれるツマミとの相性が良さそう。この感じだと、甘すぎない素朴なくらいの、餡のスイーツなんかも良いかもしれない。

・おつまみイカ
スーパーの鮮魚コーナーで売ってるおつまみイカ。乾物ではなく、しっとりしていて少し甘辛くシンプルな味付けがしてある半生タイプ。ご飯のおかずにも出来る。
合わせてみると、シンプルに旨い。現代的な味とはいえ、元がプリミティヴな魅力を引き出した日本酒。昔ながらの王道おつまみであるイカを、特に奇をてらわない昔ながらの味付けにしたツマミで合わせて合わない訳もないのかも。基本的に「炊き立てご飯の甘味」的な穀物感がベースにある酒なので、それに合うイメージでツマミを探すと良さそうかもね

・パイナップル
甘いし酸味があるからいけるかな?と思ったのに、意外にも全く合わなかった。パイナップルの甘味が強すぎて酒の柔らかな甘味が消されてしまい、後味に苦味だけが残った。ふきのとうとの合わせでも感じたけど、「強すぎる甘味」「強すぎる苦味」「強すぎる塩気」との相性は悪いみたい。注意せねば。

・レモン果汁
ストレートのレモンジュースがあったので合わせてみたら、びっくりするくらいに美味しかった。もはやカクテル。なんだこれ。酎ハイとか目じゃない。旨すぎる。
たいして甘くないはずのレモンジュースが甘く感じ、とてもジューシーに。苦味も、このくらいの柔らかな苦味ならばむしろ心地よかった。

・モッツァレラ+トマト
レモンジュースとの合わせがあまりにも美味しかったので、そのままモッツァレラとトマトを合わせカプレーゼみたいにしたら絶品すぎて感動した。プリミティヴな日本酒の味わいだから王道の和が良いのかな?と思っていたのに、こんな合わせ方がハマるのは意外。

ここまで試してみて思ったのは、この酒は「やわらかで素材感ある味わい」が魅力的なので、おつまみ全般も「やわらかで素材感ある味わい」を意識すると良いのかも知れない。酒が持つ自然の風味を消さないように気を付けながら、“同じくらいの出力で”色んな風味をプラスする。
たとえば、塩気ではなく油のほのかな甘さでうっすらと旨味を感じさせたりとか、素材感で推す感じ?その意味では、ガッツリと強くなりすぎないように注意しながらガーリックオイルみたいな香味オイルを生かしたつまみにするとか?

…と、美味し過ぎたせいでついつい飲み過ぎて、fukunomoと合わせる分が無くなってしまいそう! お酒をキープしつつ、いよいよ次はfukunomoおつまみとのペアリングへ!

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・香味和紙包み 豚味噌漬け りんご合せ味噌
 <福島県郡山市/株式会社鈴畜中央ミート>

・柴栄こだわり 上乾しらす
 <福島県浪江町/有限会社柴栄水産>

・西野屋のいか人参漬
 <福島県いわき市/西野屋食品株式会社>

・浅漬けオクラ
 <福島県伊達市霊山町/有限会社八島食品>

・あんドーナツ
 <福島県須賀川市/株式会社コンフェクションわたなべ>

・香味和紙包み 豚味噌漬け りんご合せ味噌 <福島県郡山市/株式会社鈴畜中央ミート>

最初は、香味和紙包み合わせ味噌と林檎。「香味和紙包み」という響きだけで、すでに「凄く上等なおつまみが来てる!」感ありませんか?

味噌といえば、某人気有名ラーメン漫画で『味噌という調味料はうますぎる』とまで言わしめた最強の調味料。その純粋な旨味だけが、香味和紙を通して豚肉にしっかりと染み込んでいます。林檎が隠し味に加わることで、肉の旨味が更に引き出された逸品。

これをフライパンで弱火にかけると、ゆっくりと溶け出した脂が次第にジュワジュワと小さく小気味良い音を立てながら、肉を香ばしく炙り始めます。もはや調理中に立ちのぼる音や煙からして美味しい。
時間をかけて中までじっくり火を通したら、いよいよ「辰泉 プリミティヴ」とペアリング。口の中でとろける肉汁の旨味と香ばしさに、お酒が内包する多彩な味が一気に反応してくれます。
特に味噌から時間をかけて引き出された、この純粋な旨味はたまりませんね。旨味は強いのに柔らかく、お酒の風味に近い出力で調和する。とても美味しいペアリングですね!

さらにおまけで、焼き終えたフライパンに今度は手元にあった小さめの豆腐を入れて豆腐ステーキを作ってみたら、これがとても良かった。このお肉、単品も良いけど何かと合わせてあげるとさらに楽しめるかも?

・柴栄こだわり 上乾しらす <福島県浪江町/有限会社柴栄水産>

続いては、浪江町の柴栄水産から上乾ちりめん。プライベートでもしばしば使う、美味しいお魚屋さんの自信作です。
fukunomoコメントを見ると、「よーく噛んで口内に旨味を行き渡らせてから、少し温度を上げた「辰泉 プリミティヴ」を含んでみてください。旨味✕旨味の相乗効果がより感じられます。ちりめんは少し乾炙りにして香ばしさを出しても美味しくなりそう。」
はい。この「上乾しらす」、原料が非常に良いのはもちろんですが、丁寧な加工のせいなのか臭みやエグ味、パサつきが少なく、先のおつまみに引き続き非常に強い、しかしながら柔らかな旨味を感じやすいものになっています。
お酒と合わせると、まさにfukunomoコメントにあるように旨味✕旨味の相乗効果を実感。口の中で次第に温まっていくことで、出汁のようにお酒に旨味がどんどん沁み込んできます。これ、結構量があったはずなのにどんどん食べちゃいますね。本当に美味しい。

・西野屋のいか人参漬 <福島県いわき市/西野屋食品株式会社>

続いては福島名物でお馴染みのいか人参。しかし、実は浜通りではあまり食べられておらず、いわきの西野屋さんの「いか人参漬」は、中通りのオーセンティックないかにんじんと違い昆布が入って「松前漬け」に似た感じになります。しかしfukunomoコメントによると、この西野屋さんのいかにんじんこそが「辰泉 プリミティヴ」と相性抜群! なんだとか。

早速ためしてみると、なるほど。これは昆布の甘塩っぱさがポイントなのかも知れない。この漬け汁の甘さによって、自分で勝手にペアリングやったときのパイナップルで感じた反動?みたいな苦味が生まれた。たぶん、このお酒に元々含まれている要素が強調される感じなんだろうね。
ただし、出汁の甘味は強すぎないため、苦味もそう強くはない。むしろ、このほのかな苦味がアクセントに丁度良く、絶妙な面白さを加えてくれるペアリング。なるほど、勉強になります。

・浅漬けオクラ <福島県伊達市霊山町/有限会社八島食品>

さらに、今度は伊達市の八島食品さんから「浅漬けオクラ」

思いの他にほんのり甘く、出汁感がたっぷり。この香りもとろみもグッド。さらに種の食感がアクセントになって心地良い。こちらは「いか人参漬」と合わせたときと違って苦味感は少なく、むしろ青物ならではの良い香りが引き立ちます。

・あんドーナツ <福島県須賀川市/株式会社コンフェクションわたなべ>

最後の〆は、須賀川市から「あんドーナツ」。これには、蔵元からのコメントも添えられていました。
《蔵元コメント》
『はじめはプリミティブの酸味が邪魔する感じなのですが、しばらく経つとあんの甘味と不思議に調和してきました。印象が和菓子から洋菓子的な雰囲気に変わるのも良かったです。』さらにfukunomoからは、「最後の〆は、お酒をぬる燗にしてどうぞ。時間差マリアージュをお楽しみください!」とのこと。確かに今回のペアリングは、いずれもお酒の「温度」による変化が意識されてる感があるね。
なるほどなー、と思いつつ実食してみると、なるほど、確かに!
強い酸味が引いた後に、餡子が、だんだんとモンブランクリームみたいな風味に変わっていく。なんだこれ。美味しいし面白いし、こんなペアリングってある??
このお酒「辰泉 プリミティヴ」が届けてくれる新しい驚きは、ペアリングにまで来てる感じ。素敵な経験させて頂きました。


今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?

fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。

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申込期限2023年8月15日(火)まで

ぜひこの機会にお申込みください。お待ちしています。(*´▽`*)