暁から曙、静から動。味わううちに変化する、風味。多層感。(2023年9月|男山酒造店) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

暁から曙、静から動。味わううちに変化する、風味。多層感。(2023年9月|男山酒造店)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第61回目】

それはまるで、夜明け時の高原。
凛とした透明感と静寂感。朝靄(あさもや)に包まれた湖畔にも似た気配。澄み切った空気、あるいは夜露に濡れた可憐な高山植物のイメージ。
柔らかな霧雨が水面(みなも)に広げる水紋のように、薄く、静かに重なり合う甘味と酸味、香味。その響鳴(きょうめい)は、夜想曲のように儚く美しい。
さらに、この酒には「続き」がある。味わいはやがて、東雲(しののめ)の光彩が差し込み始めたかのように次第に柔らかく、温かな表情を見せ始める。
暁から曙、静から動。味わううちに変化する、風味。多層感。

この酒は、瞬間を切り取った断片ではない。一つの物語だ。
飲み始めから後味まで、その名が示す「回」の文字に相応しい流れと展開、そして感動のフィナーレが待っている。私は、この酒に惜しみなきスタンディングオベーションを贈りたい──。

福島県大沼郡会津美里町の男山酒造店は、幕末の1865年創業。普通酒を中心に1970年代後半には2000石近くの酒を生産し、一時期は関東にも出荷していたといいます。
しかし、杜氏の体調不良をきっかけに1998年から蔵は長らく休業状態。それから約20年以上の時を経て奇跡的な復活を遂げた蔵です。

今はまだ、福島県内でも見かけることが難しいお酒。しかし強い意志と多くの人達の協力で復活を遂げた蔵の酒は、世に送り出すに相応しい、探してでも飲むべき銘酒と断言できる確かな品質と個性があります。今回、この蔵の酒がfukunomoで頒布されることには格別の感慨深さを感じる次第。ぜひ、この機会により多くの方にfukunomoへお申込いただきたいところですね!

今回の『会津男山 −回− 純米吟醸 福乃香 直汲み 生』を表現するならば、冒頭にも記したように肴が持つ味わいが水紋のように響き合う味わい。特に、「甘味」が上手に引き出されている印象があります。
ただし、これは別段酒が「甘口」と言ってるわけでは全くありません。『回』は素材が持つ自然な甘味や旨味を優しく引き立てるので、これがペアリングを楽しめる実に優秀と言えるのです。いわば会食全体の司令塔、ミッドフィルダー。個人プレーに走らず、チームの良さを引き出し、戦力をボトムアップしてくれるイメージ。
追熟しつつある果実、ほのかにパイナップルを思わせるジューシーな風味。吟醸の洗練さがありつつ旨味もある。全体的に「ふくよかさ」「温かみ」「やわらかさ」も響き合います。

■今月の美酒

・会津男山 −回− 純米吟醸 福乃香 直汲み 生 <福島県大沼郡会津美里町/男山酒造店>

軽く温かな風のような風味が癖になる一本。
繊細で端正、まるで天使が躍るような舌当たりです。
合わせる料理で表情ががらりと変わり、飽きません。

勝手にペアリングを考えてみた

今回も、先に自分で勝手にペアリングを試してみます。
ペアリングにあたっては、この子が持つ「甘味を引き出す酒」という特徴を上手く生かしたいところ。

まずは枝から外したばかりの枝豆を、少し固めに茹でたもの。
これは豆そのものだけでなく、振り塩までも甘く感じさせる。しっとりとした旨味の後味の柔らかで幸せな余韻が、お酒によって延長されるイメージ。これは凄いな。この感じだと、他にも会津の「塩茹で落花生」なんかは絶対に合うと思う。

次は酸味を試したくて、自作の酢の物(松川浦のアオサノリときゅうりを酢と出汁で和えたもの)に合わせてみたところ、酸味の中にもおつまみの甘さを強く感じた。アオサとかキュウリ、酢までが少し甘く感じられるって結構凄いのでは。酸味のある肴を上手に合わせてあげると、箸休めも含めて良いと思うね。

このお酒、甘さ以外に香りを引き立てる特性も強い。なので、調和を乱す生臭さなどのキツ過ぎる匂いは避けた方が無難かなと思えたり。水面の水紋の美しさを眺めるとき、大きな岩を投げ入れてはダメな感じ?
また、あくまでも自然な甘味を引き立てることで香りと旨味のバランスもとれるので、肴自体が最初から甘ったるいもの合わせるのはあまり良くないと思う。果物と甘いお菓子を一緒に食べたら味わかんなくなるような喩えが適切かな。

「燻製」「白身魚」のツマミとの相性もみたくて、真鯛のスモークも合わせてみた。
感想として、ある程度のスモーキーさはお酒と喧嘩しない。その上で、真鯛の熟成された旨味がとても強い甘味となってお酒に溶け込んでくるので実に旨い。「臭みを抑えた、甘味引き立つ上品な旨味」みたいなのを合わせるとジワジワと多幸感が広がっていく。これは美味しいね。

「枝豆が降り塩まで甘かった」ほどなので、脂や醤油からも、肴の素材が持つ「甘味」を優しく引き出してくれる。よって、たまり醤油とかも美味しい。これ、絶対炭火焼の穴子蒲焼に山椒ふったりしたものと合わせたら旨いよね。こういう、それぞれの肴の隠された旨味や甘味をジワジワ引き立てて調和させてくれる特徴。アレだ。「和風の懐石料理全般に合う」と思う。高級料亭で採用しても良い酒だと思えてくる。

とはいえ、もう少し庶民的なペアリングとももちろん合う。餃子と合わせてみたら、肉汁が甘旨くなった。ガーリックも、火を入れたものを少々なら甘味が引き立ちとても良い感じ。

一方で、苦味はどうかな?と思ってピーマンを合わせてみたけど、これは口のなかにずっと漂ってる柔らかで自然な甘味の余韻が壊されてしまい少々合わない。とはいえ、苦味は上手に使えて良いアクセントになるので甘味、酸味、香味を上手に調和させてバランスを整えると良いかもしれないね。

それでは、いよいよfukunomoペアリングの実食といきましょう!

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・小泉食品のおでん
 <福島県いわき市/小泉食品>

・ふぞろいのエリンギ
 <福島県いわき市/小川きのこ園>

・国産大豆使用 枝豆ざるどうふ
 <福島県郡山市/大内豆腐店>

・山うど油炒め
 <福島県大沼郡会津美里町/カネマスクリキ食品>

・会津銘産 もも馬刺しブロック 辛子味噌付き
 <福島県会津若松市/会津畜産>

・小泉食品のおでん <福島県いわき市/小泉食品>

最初は、いわき市の小泉食品から「おでん」。fukunomoコメントによると、「『回』と合うのは、何と言っても繊細なお出汁。特に大根との相性が良いです。色んな具材と『回』の味わいの違いをお楽しみください!」とのこと。
ええ、「繊細なお出汁が合う」というのはまさに同感。先ほど「高級料亭で採用しても良い酒」と評した所以でもあります。素材の自然な甘味や香りを上手に引き出してくれるので、出汁との相性は抜群です。少し温めたおでんの出汁を入れた出汁割りで飲んでも良いくらいに。
さらに、おでんとの相性はfukunomoおすすめの大根のみならず、他の具とも非常に良かった。魚肉の具、そして玉子の黄身との合わせも秀逸。多様な具材それぞれの個性が、『回』が紡ぐ物語を演出する魅力的なキャストになっている。実に名俳優揃いですね!

・ふぞろいのエリンギ <福島県いわき市/小川きのこ園>

次は、いわき市の小川きのこ園から『ふぞろいのエリンギ』。fukunomoからは「たっぷりのバターと仕上げにお醤油でどうぞ。プリプリとした旨味、きのこの芳しい香りと『回』の持つ凛とした香り、米の上品な味わいの組み合わせが◎」
そうなんです。こういう「香り」「甘味」を引き立てるお酒にはキノコ特有の香りと弾力ある食感がとても合うのです。それこそ、懐石の流れで松茸料理と合わせたいくらいには。
もちろん、椎茸やエリンギなどとの相性も非常に良い。さらにバターの甘味と炙り醤油の香ばしさ、甘じょっぱさもたまらない。特に、小川きのこ園さんのエリンギは香りとプリップリの食感が際立ちやすいので絶品です!

・国産大豆使用 枝豆ざるどうふ <福島県郡山市/大内豆腐店>

【勝手にペアリングを考えてみた】では枝豆を実食しましたが、まさにそのイメージと一致する『枝豆ざるどうふ』。
「これはぜひ塩をちょっとだけ振ってください。枝豆の甘味と『回』のキリリとした味わいが良い後味に」とのことですが、判ります。自分で枝豆と合わせたときには降り塩までも甘く感じさせてくれたこのお酒。旨味たっぷりのざる豆腐と合わせて美味しくないはずがありません。さらに、一口目に感じる『回』の凛とした気配と豆腐のひんやり感が相まって、火照った身体を和らげる箸休めも兼ねることができます。他のおつまみとのバランスも熟考された、秀逸なペアリングですね。

・山うど油炒め <福島県大沼郡会津美里町/カネマスクリキ食品>

続いては、カネマスクリキ食品さんから「山うど油炒め」。
「fukunomoではおなじみのおつまみメーカー。こちらも蔵のある会津美里町のメーカーさん。ほろ苦さと山うどの香りが、『回』をドレスアップしてくれる印象のマリアージュ」とのことですが、なるほど。
このお酒、苦味との合わせ方は少々難しさがあるのですが、油の甘さが山うどの苦味をジューシーに包み込んでくれて、非常に食べやすくなっています。
というより、食べやすすぎてどんどんつまんでしまう。山うどの香りまで甘い。「ドレスアップしてくれる印象のマリアージュ」とは、言い得て妙。

・会津銘産 もも馬刺しブロック 辛子味噌付き <福島県会津若松市/会津畜産>

今月の〆は、会津畜産からの馬刺し。
これまでfukunomoで馬肉が出たことはありましたが、特に高級品である馬刺しが送られてくるのは初めてではないでしょうか? ユーザーとしては大歓迎ですが、ちゃんと採算とれてんのかな…?
fukunomoからは、「※注 味と香りが強いので必ず最後に合わせてください」 とした上で、『蔵のある会津美里町にも工場を構える会津の馬刺し。会津らしく、辛子味噌としょうゆでお召し上がりください。にんにくと辛子の刺激は強いのですが、お酒の旨味と清涼感が意外にも負けずに味わえます』との紹介。

確かに、繊細な甘味、香り、旨味を調和させる『回』にこれを合わせるのは、他の肴とのバランスを考えると少し力強過ぎるかな? との印象も。一方で「会津と言えば馬刺し」でもあり、ぜひともペアリングを試してみたい一品でもあります。その意味でも、「最後に合わせる」という指示は的確だと思います。

実際に合わせてみると、そもそも会津の馬肉は赤身が基本なので、肉の甘味と旨味がジンワリ引き立てられる印象。それでいながら、肉の生臭さはむしろ抑えられている感じ。そこに辛子味噌を合わせると、強烈な香りと旨味が一気にガツンと広がります。

これは、全く悪くない…というか癖になりますね。このお酒には「肴同士を引き立て、柔らかな調和で結ぶ」奥ゆかしい特徴があるものの、決して芯が弱いわけではないので折れない。ここまで強い味でも懐広く受け止めてしまう。実際、【勝手にペアリングを考えてみた】の時には餃子と合わせても美味しかったくらいだから当然かも知れないね。延々と馬刺しを楽しんでいられそう。


今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?

fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。

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申込期限2023年9月15日(金)まで

ぜひこの機会にお申込みください。お待ちしています。(*´▽`*)