今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
【連載第65回目】
宇宙帰りの酵母で仕込む──。
「復興支援」 でなぜ宇宙? との疑問からこれまでも色々調べてみたが、今回も明確な答えは見付けられない。
ただ、酵母の働きが味にも関係する中で、「宇宙帰り」という言葉には、なんとも新しい未来を予感させる響きがある。しかし肝心の味には、いかほどの影響があるのか。
■今月の美酒
・会州一 東北復興宇宙酒 純米酒 <福島県会津若松市/山口合名会社>
考えるより飲んでみると、美山錦らしくスッキリとした口当たりが印象的。
fukunomo編集部によると、『宇宙酵母の特徴を生かし、辛口に仕上げている』とのこと。
なるほど。フルーティな香りは控え目で、瞬間的な華やかさは無い。いわゆる、食中酒に向く「辛口」のお酒。
しかし一方で、「辛口」とは言いながらも口当たりのピリピリ感やツンとした香りはなく、あまりにもまろやか。口当たりがとても優しく、旨味や甘味、酸味の繊細なハーモニーを感じやすい。しかも何とも穏やかで、しかし「円熟」のそれとも違う。熟成の代償にありがちな「重さ」の類は全く無い。かなり飲みやすい。驚くほどに飲み疲れない。
「辛口」特有の爽快感がありながらも、同時に繊細な味わいが口内にじっくりと沁み渡る。この絶妙かつ奇跡的な心地良さを何と言うべきか。
喉に流し込んだ後も、心地良さの余韻が延々と広がり続ける。飲む程に癖になる。
そもそも会州一自体が銘酒揃いとは言え、なんとも、実に旨い酒だ。
特筆すべきは、肴とのペアリングがとても秀逸であること。そのまろやかな爽快感、柔らかで控え目ながらも芯の通った旨味が、あらゆる素材を磨き輝かせてくれる。
華と煌めくまばゆい旨味も、玉響にそよぐ繊細な機微も、それら全てが星影のように降り注ぐ。まさに唯一にして全て。文字通りのUniverse。
こんなに旨い酒を、たとえば旧友との再会や祝い事の宴席に持ち込んだなら。積もる話も、とびきり景気の良い話も、しみじみと酒を分かち合う幸せも、きっとどこまでも無限に広げてくれるに違いない。
■勝手にペアリングを考えてみた
冒頭からいきなりですが、このお酒、本当に食中酒として旨い!!と思う。大好き。あっという間に飲んでしまえる。
せっかくなので、繊細な味わいの機微を楽しむ意味を込めて、和の中でも特に穏やかなペアリングを合わせてみたいな思う。素材そのものの良さを、酒の繊細な味わいが共鳴させてくれるに違いないので。
《カナガシラの塩焼き》
たとえば上品な白身魚の塩焼きと合わせたい。今回は常磐ものカナガシラを塩焼きにしたら非常に美味しかった。鯛の塩焼きとか、他に、この感じだとタチウオの炙りとかでも美味しいかもしれない。
《おびすやの青のり》
相馬市、松川浦名産の青のりのオリジナル佃煮。優しい甘味と塩気、青のりの香りがとても良く、とにかく優しく穏やかな風味が今回のお酒とぴったり。お酒の繊細さを潰すことなく、じっくり、じわじわと楽しむことが出来てかなり良かった。地元のアサリが入っているのも嬉しいよね。
《ラジウム玉子》
黄身と白身のねっとりとした口当たりとほのかな甘味、旨味、出汁の風味がやはり、今回のお酒の優しく繊細な風味とベストマッチ。かみしめる程に広がるじわじわとした旨味は結構推せますね。
《アクセント》
ここにアクセントで風味や香りを入れるなら、和を感じさせる繊細なものが良さそう。青シソなどが良いかもしれない。あるいは、山椒や柚子など?
山椒ちりめんとか、長久保食品の「長久保のしそ巻」とか?ああ、でも塩気を抑えてお酒の繊細な甘味とかを生かすならば、ここはかぶの甘酢付け柚子風味 とかも箸休めやバランス的に良さそうな予感がする。
《学園マドレーヌ》
個人的には甘味として推したいのが、広野町のバナナ「綺麗」を使ったバナナマドレーヌ 。
このお酒にぴったりの素朴で優しい甘さを持つマドレーヌながらも、少し強めのバナナ風味が日本酒の酢酸イソアミルを強化する方向に進み、お酒の香り高さがアップ。「バナナにも似た香気」と称される日本酒の吟醸風味を本物のバナナ風味で補うという逆転の発想。双葉郡復興の支援にもなるので、ぜひこれはオーダーで確保できないものかな。広野町のバナナ生産量を思うと難しいかな?
では、いよいよfukunomoペアリングとの実食に移ります!
■今月のマリアージュ/ペアリングセット
・安達太良 豚カルビ丼
<福島県大玉村/大丸屋>
・胡瓜のしば漬
<福島県伊達市/菊甲食品>
・ソフトくんせいたまご
<福島県いわき市/あぶくま鶏卵>
・韓国海苔プレミアム
<福島県相馬市/サンエイ海苔>
・ショコラインクッキー ハート & ハート
<福島県石川町/お菓子のさかい>
・安達太良 豚カルビ丼 <福島県大玉村/大丸屋>
厚切りの豚バラ肉に甘辛い旨タレがじっくり、トップリと絡んだ一品。焦げないように気を付けつつも、脂がじゅわ… っと沁み出てカリっとした食感が残る程度に、少し香ばしく焼くのがポイント。
本来であれば丼物用の商品ながら、単品おつまみとしても秀逸ですね。「肉をしっかり食べた」満足感が非常に強い。いやこれ、そのままでも相当美味しいね。
それにしても「宇宙酒」、このすっきりした口当たりでありながら驚くほど穏やかに、ジワジワと無限に広がっていくような旨味が本当にクセになるね。さらにペアリングで合わせてみても、これほど強い味付けの肉を、肉感と食べ応え、ジューシーさ、香り、そのいずれも全く損なうことなく、むしろそれらを全力で引き立てる。そのくせに、酒本来の味もまた、いささかも損なわれない。「こんなにも旨味が強いのに、こんなにもゴクゴクとスムースに飲める、しかも飲み飽きない日本酒」って、意外とありそうで無い。本当に稀有な魅力。
この酒だからこそ、これだけ強い旨味の肴に合わせても味わいに爽やかな透明感が残る。なるほど、このおつまみにはこのお酒を合わせたい。すごくよく分かる。
・胡瓜のしば漬 <福島県伊達市/菊甲食品>
『蔵元が「昔ながらのしば漬けが好き」とのことで、王道のしば漬けと合わせました』
なるほど。蔵元が普段から好んで合わせるものを共有すると、造り手と飲み手が「同じ釜の飯」を分かち合っている感が高まって良いね。
そういいながらも実は私、しば漬けは滅多に食べません。「ちゃんと美味しく味わえるかなー…? 」と思いつつお酒と合わせてみると、これが(失礼ながら)思っていたより遥かに美味しい!
爽やかな酸味が「宇宙酒」 の無限のまろやかさに包まれて、また新たな境地に至る感覚。
なお、この「しば漬」 を先の「豚カルビ丼」 と一緒に口にいれて宇宙酒と合わせると新たなハーモニーが更に生まれますね。この独特の香りカリっとした歯ごたえ、鮮烈な酸味が豚カルビの甘辛な旨味と香り、香ばしさ、お酒の透明感と旨味、その他いろいろと調和して、非常に満足度の高くダイナミックなペアリングになります。いや、これは一瞬、目の前に小宇宙の広がりを感じましたね。
ソフトくんせいたまご <福島県いわき市/あぶくま鶏卵>
次は、いわき市のあぶくま鶏卵から「ソフトくんせいたまご」。
自分でペアリングを 考えたときには「ラジウム玉子がいいかな」と思ったけど、そこに燻製のほのかなスモーク香がプラスされることで、この宇宙酒の広がりに更なるエッセンスが加わってくれる。
このエッセンスもまた、中々に楽しい。これは燻製たまご、しかもジューシーさが残るソフトなものを加えたのは大正解だね。美味しい。
・韓国海苔プレミアム <福島県相馬市/サンエイ海苔>
塩とごま油、磯の香味にパリパリの食感が小気味良い。海苔は佃煮で考えていたけど、焼き海苔、しかも韓国風の味付けという選択肢も食感と胡麻油の香り、塩の旨味が加わって肴としてとても良いね。お酒に豊かな風味で緩急を付けてくれます。
他のおつまみが比較的シットリ系だったのと合わせても、この軽快な食感は箸休め的な意味でも秀逸。fukunomoさん、流石のバランス感覚です。
・ショコラインクッキー ハート & ハート <福島県石川町/お菓子のさかい>
最後の〆は、石川町のお菓子のさかいさんから「ハート&ハート」。
サクっとした口当たりから、口の中で一気にホロホロとほぐれていく甘味と旨味。この瞬間を味わいたくて、すぐにまた一つ食べたくなる。これ実は、結構ヤバいやつです。福島の隠れた名物と言って良いくらいに美味しい。本当は、他県の人にもっと教えてあげたい秘蔵っ子。fukunomoでこれを楽しめた幸せな方は、ぜひとも堪能してくださいね。
〆としてこの甘味を入れると、酔った身体に多幸感がヒシヒシと沁みこむ感じで、かなり幸せな気持ちになれます。少し早いけどバレンタイン?的な喜びもあるかも。
今月も、ご馳走様でした!
今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?
fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、新型コロナウイルスでの影響から立ち直ろうとする福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。
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