奇をてらわなくていい 目指すは上質・王道の酒 笹正宗酒造《福島県喜多方市》 - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

奇をてらわなくていい 目指すは上質・王道の酒 笹正宗酒造《福島県喜多方市》

代表取締役社長 兼 杜氏
岩田 悠二郎(いわた ゆうじろう)さん

1986年生まれ。東京の大学へ進学し、そのまま東京で就職。
2012年にUターンし笹正宗酒造に入社。酒蔵の8代目となる。
趣味はサウナと料理。

 

 

「喜多方(きたかた)ラーメン」で知られる喜多方市。
「蔵のまち」と呼ばれ、醤油や味噌、そして日本酒と醸造文化が根付いています。

岩田悠二郎さんが笹正宗酒造の社長となったのは、弱冠30歳の時です。
「40歳くらいで戻ろう」と考えていたので、ずいぶんと早い帰郷となりました。

ふと飲んだ我が蔵の酒の味に危機感をおぼえ、急きょ蔵に戻ることを決断したのです。
最近では若い起業家が増えて、盛り上がっているという喜多方。

若くして蔵を率いる立場になり、酒造りと経営に取り組んできた悠二郎さんにお話を伺いました。

 

 

行動と内省

悠二郎さんは、蔵に戻ったその年に新銘柄「ささまさむね」で「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のゴールドメダルを受賞。
酒造りに関しては素人同然でしたが、福島県清酒アカデミーへ通い、誰彼かまわず教えを請い、教わったことはすぐに実践していきました。

「一度その気になったら、図々しいくらいに相談や質問をします(笑)。
やりたいことって、時間が経つと意外と忘れてしまうものじゃないですか。
だから、思い立ったらすぐにやりたいんです」

行動力・瞬発力・豪快さーー。悠二郎さんを見ているとそんな言葉が浮かんできます。
意識しているのは、「自分で調べる」→「誰かに聞く」→「聞いたことを実行する」というサイクル。

そして最後に来るのが「内省」です。
サウナのために遠出もするという悠二郎さん、サウナの中では日々の内省をするのが習慣だそうです。

そんな悠二郎さんを専務として支えるのが、2つ上の兄である高太郎さんです。
悠二郎さんから遅れること3年後に入社し、以来二人三脚で蔵を支えてきました。

弟が経営で兄が酒造りというのは、なかなか珍しいポジションかもしれません。
以前は酒造りにも携わっていた悠二郎さんですが、今では造りは兄に一任。

そして、一歩引いたところから弟を立てる高太郎さん。
東京で2年間2人暮らしをしていたというところから生まれた信頼関係なのかもしれません。

 

 

喜多方で造る理由

今月のお酒『純米吟醸 ササ正宗』。
なんと生タイプはfukunomo限定酒です。

『純米吟醸 笹正宗』と呼ばれていたお酒でしたが、中身もラベルも一新。
喜多方産の酒米「夢の香」を使っています。

他の地域で栽培されたブランド米を使っていたこともありましたが、今は米も酵母も、
できる限り喜多方産のものを使うようにしています。
一度東京で暮らした経験があるからこそ、以前はただの田舎だと思っていた喜多方の魅力がわかるようになったそうです。

「この町で酒造りをさせてもらえているありがたみを感じています。
喜多方に生まれたことにも、酒蔵に生まれたことにも、本当に感謝しています。私の誇りです。
それならこの町で出来たものを使うのが、ここ喜多方で酒を造る理由ではないでしょうか」

行動的で変化を恐れない悠二郎さん。
酒造りへの考えも、前回お話を伺った4年前から変化していました。

「以前は、奇をてらった個性的な酒を造ろうとしていました。
今は、上質で王道なものを目指しています。
蔵として、『これがうちの定番だ』と言えるものを造りたいですね」

理想の味は、口の中で香りが穏やかに弾け、しつこくないーー。

ただ、そこに至るにはまだまだ道半ばだといいます。
拡販にも力を入れ、全国各地でもっと気軽に飲める酒にしていくというのも大きな目標です。

これからも行動と内省をくり返し、悠二郎さんは挑戦を続けていくのでしょう。