共に漂う、月影耀(かがよ)う陰影、人を魅了するしめやかさも感じさせる澄んだ美酒。(2024年7月|寿々乃井酒造店) - fukunomo(フクノモ) ~福島からあなたへ 美酒と美肴のマリアージュ~

共に漂う、月影耀(かがよ)う陰影、人を魅了するしめやかさも感じさせる澄んだ美酒。(2024年7月|寿々乃井酒造店)

今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!

【連載第71回目】

凪に響く波紋。
夏夜を照らす銀月。一陣の涼風。

全般に「芳醇」と言われる福島の酒にも、「淡麗辛口」と呼ばれるものは幾つかある。
この酒のキレは、中でもかなり強めの部類だろう。

一口目の口当たりこそ柔らかながら、中盤、後味につれ冴えわたるような引き締まりを見せる。
その魅惑的な風味は、しかし普段の寿々乃井とはだいぶ異なる趣のようにも感じる。

かねてより、寿々乃井の酒は淡麗ではあるが「甘口」と評されることも多かったという。
穏やかな口当たりと共に月下美人のように花開く、「馨香(けいこう)」と呼べる域まで洗練された艶やかな気配。

共に漂う、月影耀(かがよ)う陰影、人を魅了するしめやかさも感じさせる澄んだ美酒。
秘め酒のような雫。

その複雑で奥深い甘美さを表現するに、「甘口」と呼ぶ人も或いはいたのかも知れない。

寿々乃井が夏に見せたのは、それとは全く異なる表情。夏の華やぎに添えられた、可憐であるが強く、凛々しく、気高い涼み酒。 暑さに茹(う)だつ身体には、一際沁み渡る一献である。

■今月の美酒

・寿月 彩<福島県天栄村/寿々乃井酒造店>

寿々乃井酒造店さんは、私が特に愛飲している蔵の一つ。
天栄村で地元の人達に長年愛されてきた歴史を持っています。

月の光を思わせる複雑で奥ゆかしい独特の気配を纏った「寿月」には、外の蔵ではなかなか味わえない特有の魅力があります。

実は他県在住の酒好きの知人友人にも薦めたところ、そのいずれもが「旨い酒は日本中に幾つもあるが、他とは全く違う独特の旨さと魅力がある」と夢中になり、一部はわざわざ遠方から蔵まで「聖地巡礼」を兼ねて買い付けに走ったほどの蔵元さんでもあります。

今回の「彩」は、そんな寿々乃井酒造店さんが夏の涼み酒として出しているお酒。
透明感ある口当たりから、新潟の酒にも似たキレの強さへと繋がる爽やかな味わいです。

今月は、こちらのペアリングを楽しんでいきましょう!

勝手にペアリングを考えてみた

まずはいつもの通り、最初は<勝手にペアリング>から。

このお酒は最初の口当たりこそ柔らかめで飲みやすいものの、中盤から後味にかけてのキレの鋭さが特徴的。
暑さの中で飲むのに丁度良いと思われます。

肴と合わせた際は、脂などの強い味をかなり「切る」ような、トリミングする感じのイメージ。
これなら生魚系でもいけるかも。

それも含め、かなり強めの旨味を持った肴…たとえば肉系なら、レバーとか砂肝とかよりも正肉系だね。
あるいは逆に、夏の旬を感じさせるサッパリとした風味が良さそう。
とはいえ、あんまり爽やかさを求めるあまり「水っぽい」感じにするよりも、酸味などでメリハリつけてあげると良いかな。

まず、この時期ならではの枝豆と合わせてみた。
王道のおつまみとはいえ、茹でたて枝豆の甘さと粗塩の感じがとても良い。素材の良さが引き立つ。
このお酒、塩気が入ると甘さに感じさせてくれる感覚があるので、ペアリングのやり方次第でかなり変幻自在になるかも知れない予感がする。

続きチャーシューと合わせてみたところ、脂を切る力がかなり強く、肉本来の素朴な味が強調される感じに。
これは好みが分かれるかな。
チャーシューに味噌などの強い味がついていると、もっと良い方向にペアリングできるかも知れない。
併せるなら、白味噌系よりは断然赤味噌。コクが強いものが良さそう。

魚介系との相性を見るために、以前頂いた、「まこの旨煮」とも合わせてみた。
煮物系の強い味はもとより、魚卵などでも平気。
匂いを「切る」力が強い酒だね。

赤身、白身など魚全般にそれぞれ相性良さそうながら、これは「彩」に限らず他の寿月シリーズにも共通するのだけれど、寿々乃井の酒には「貝」が特に合うと思う。
特に帆立の貝柱、ホッキ、アワビなど。

オリーブオイル系やコンソメ風味との相性は良い。
これはイタリアンなどと合わせるのが良いか。オイル系・海鮮系のパスタなんかもいいよね。
チーズが多めのピザなども美味しいと思う。

それでは、今回もfukunomoペアリングを合わせていきましょう!

■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・極熟 香味和紙包み豚味噌漬け りんご合わせ味噌
 <福島県郡山市/株式会社鈴畜中央ミート>

・ジェノベーゼピザ
 <福島県白河市/株式会社ステラフーズ>

・こんにゃくそうめん
 <福島県二本松市/有限会社安斎食品>

・相馬ひと口きゅうり漬
 <福島県南相馬市/株式会社菅野漬物食品>

・里のごちそう あぶくまの天然水 水ようかん
 <福島県石川町/株式会社お菓子のさかい>

・極熟 香味和紙包み豚味噌漬け りんご合わせ味噌 <福島県郡山市/株式会社鈴畜中央ミート>

はい、来ましたこれ。
肉にしても、味噌漬け、りんごまで使った極上の熟成肉。
完璧なチョイスです。

fukunomono試食会では「味噌味が沁み込んでいながら、漬けた味噌がべたつかないよう、和紙に包んだ上品な逸品。
脂をスキっと切ってくれる質感が好評でした。」とありますが、まさにそれ。

味噌の香ばしさと強烈な旨味を、お酒がかなり強めに切ってくれる。
大変強い旨味ながらも、非常にキリッとする。
それぞれの味の輪郭が際立ち、全くぼやけない。

これは肉も酒もそれぞれ強い存在感を発揮して高いレベルでぶつかり合った結果、双方譲らず結果的に素晴らしく高次元のペアリングが成立してしまっている感じ。
軽く感動するくらいに美味しい。

・ジェノベーゼピザ <福島県白河市/株式会社ステラフーズ>

続いては、「ジェノベーゼピザ」。
「バジルソース、チーズとの相性は抜群。

「彩」が負けずにそれぞれ個性を残しているところが好評」とのことでしたが、これも正に。
バジルの風味が「彩」にさらなる香りのグラデーションを出しながら、強い味のチーズも旨味と風味の輪郭を、そのまま食べるよりも遥かに強く際立たせる。

いや、これはいいね。
先ほどのお肉と同様、「重なり合う」ペアリングというより「際立たせる」ペアリング。

なるほど、夏に楽しむに、このコントラストは完璧と言えるかも知れない。

・こんにゃくそうめん <福島県二本松市/有限会社安斎食品>

続いて、箸休めを兼ねた「こんにゃくそうめん」。
『ツルリとした喉越しはもちろんながら、付属の「レモンしょうゆタレ」が「彩」との相性を更に良くしてくれています』との解説が。

おそらく、こんにゃくだけだと少し「水っぽさ」が際立ってしまう可能性があるかと思えば、なるほど付属の「レモンしょうゆタレ」を使い酸味を使うことで、風味が豊かになる。

ここは風味を更に増すため、相馬のアオサ海苔などを足して、酢の物的に楽しんでも合うかも知れない。

・相馬ひと口きゅうり漬 <福島県南相馬市/株式会社菅野漬物食品>

fukunomoでも何度かお世話になっている「相馬ひと口きゅうり漬」。

「理奈さん(蔵元)イチオシ。「クリームチーズ味噌漬け」が名高い香の蔵さんのもう一つの主力商品。しっかりした味なのに塩辛過ぎないのは乳酸発酵のおかげなのだとか」との事ですが、確かに味が強いのにキツさが無いのがこのきゅうりの魅力。

甘しょっぱい風味がやさしく溶け込んで、じわじわと口内に広がっていく感じは、今度は「重なり合う」タイプのペアリング。

・里のごちそう あぶくまの天然水 水ようかん <福島県石川町/株式会社お菓子のさかい>

〆は、石川町の「お菓子のさかい」さんから「里のごちそう 水ようかん あぶくまの天然水」。

『あぶくまの天然水で仕込んだ夏の味。冷やしても良いのですが、敢えて常温×冷たい「彩』」と合わせるとものすごくくちどけが良く、お酒の味も引き立つ不思議なマリアージュ』の解説に素直に従ってみたところ、これは一口目に感じる口当たりの透明感を活かしつつ、お酒の中盤、後味をようかん側に引き寄せ軌道修正させる感覚のペアリング。

味変がちょうどいいアクセントになるし、甘さ、くちどけが「重なり合う」感じに溶け込んで、お酒を柔らかくする。
特に水ようかんが敢えて常温であることで、「柔らかさ」がさらに強まる。

爽やかながら甘く、甘すぎなくて、やわらか。
この意外性ある風味の妙は、まさにペアリングの醍醐味であると共に、〆に相応しい満足度が高い味わいでした。

今月も、ごちそうさまでした!


今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?
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