今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
【連載第77回目】
「旨い。」
この一言で全てを語り尽くせる気がする。それほどまでに、この一杯には圧倒的な説得力がある。
新春の喜びをそのまま映し込んだかのような「初しぼり」。ほんのひと口含むだけで、心が揺さぶられる――美酒だと確信させる圧倒的な貫禄。言葉を介さず、五感そのものに直接訴えかけてくるような感覚だ。飲む人の心を一瞬で掴み取り、その余韻をゆっくりと解きほぐしていく。そんな力強さが、この酒にはある。
この酒の持つ独特の佇まい、そして纏う気配。言葉を尽くせばかえって野暮になるかもしれない。しかし、それでもなお、この酒の持つ魅力を語らずにはいられない。問わず語りのように、ついつい筆が進む。少しでもこの感動を共有したいからだ。
グラスを傾けると、まず鼻腔をくすぐるのは、齧りたてのもぎたて林檎を思わせるフレッシュな香り。それに続いて、強い旨味と酸味が一斉に押し寄せる。個性は際立つのに、どこか優美なまとまりを持っている不思議さがある。全ての要素が互いを引き立て合い、鋭く際立ちながらも一切の乱れがない――その神がかり的なバランス。これは、もはや酒造りという枠を超えた、ひとつの芸術と言っても過言ではないだろう。
その圧倒的な存在感と調和の妙は、合わせる肴を拒むどころか、むしろ多彩な味わいを包み込み、引き立ててくれる。脂の乗った肉料理から、繊細な魚介の一品、さらには香り高い和菓子に至るまで。この酒が持つ「包容力」は、圧倒的な強みを見せる。
一方で、あまりに万能すぎるその八方美人ぶりに、どこか掴みどころのなさを感じるのもまた事実。全てを包み込む懐の深さゆえ、酒そのものの「本音」が見えにくい。だが、それがかえって人を惹きつける――もっと知りたい、もっと深いところに触れてみたい。そうした欲求を掻き立ててくる。この酒には、まるで人の心の深淵を覗き込むような魅惑的な力がある。
最近、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたというニュースが話題となった。そうした日本文化の結晶を五感で味わう営み――まさに、この酒を堪能すること自体もまた、その本質なのだろう。「千駒 純米 初しぼり」は、ただの酒ではない。日本の風土、職人の技、そして四季の移ろいまでも、その一滴に凝縮して伝えてくれる。飲むほどに、日本の「文化」を手に取るように感じられる、そんな稀有な一本である。
■今月の美酒
・千駒 純米 初しぼり <福島県白河市/千駒酒造>
■勝手にペアリングを考えてみた
「千駒 純米 初しぼり」は、新年の晴れやかな気分を盛り上げる、まさに特別な一杯です。その力強い旨味と酸味は、飲む人を魅了し、福島の多彩な食文化をさらに引き立てます。個性が際立つ酒は、おつまみ選びに挑戦する楽しさもひとしお。
今回の「勝手にペアリング」では「千駒 純米 初しぼり」の本音に迫るべく、洋と和、双方の視点からペアリングを試してみました。
・洋風の挑戦:パングラタンと共に
最初に試したのは、香味と油を合わせたパングラタン。こんがり焼けたチーズ、ガーリックを効かせたオリーブオイル、舞茸とベーコンの旨味が絡み合った一品です。この酒は、いわゆる「甘口」ではないものの、貴腐ワインのような極甘口ワインに合わせる肴のイメージでも良いのかも知れない。焼き上げた香ばしさが林檎のようなフレッシュな風味と相まって、アップルパイを思わせる味わいに。
ガーリックも、生ではなく焼いたものなら、この酒の芳醇な香りと絶妙な相性を見せます。オリーブの香りもまた、酒の酸味を引き立て、香りの化学反応が楽しめます。
・和の心:菜の花ニシン
次に試したのは、菜の花ニシン。洋から和に切り替えても合わせてくれる懐の広さがあった。テイスティングの実験とはいえ、ここまで別ベクトルの肴を合わせるのはどうか?と思いつつ試してみると、ニシンの酸味と数の子の旨味が見事に酒と調和。先ほどの香ばしいチーズやオイル、ガーリックといった洋風エッセンスとは全く別ジャンルながら、これもまた美味しい
菜の花ニシンの強い酸味は、油や香味と合わせたときとは別の繋がり方によってのこの酒の美味しさを感じる。海産物特有の風味、特に魚卵はペアリング出来る酒を選びがちながらも、芯が強いこの酒はしっかり美味しく合わせてくる。
この相性ならば時節柄、お正月の定番、浸し豆や数の子を合わせても良いかもしれません。
さらに「林檎を齧ったような風味」という切り口から考えると、焼いた肉との相性も良さそうだね。そもそも、さっきのパングラタンといい、炙った香ばしさとの相性は全般的に良いと思う。焼き魚やアオサの香味を添えた一品も素晴らしいパートナーとなり得そう。さらに和のテイストとして胡麻油を使ったアレンジも面白そう。
・冬の甘味:林檎系スイーツの可能性
甘味は林檎のような香味を活かして、最初に出した「アップルパイ」のイメージを疑似的につくってみるなどはどうか。香ばしさとザクザクした食感のスイーツと合わせたらきっと美味しいはず。
それでは、いよいよ今月のfukunomoペアリングにいってみましょう!
■今月のマリアージュ/ペアリングセット
・白河高原清流豚 三五八漬け <福島県白河市/肉の秋元本店>
・竹ちくわ うに <福島県いわき市/夕月>
・国産よせ豆腐 <福島県福島市/大黒屋豆腐店>
・くるみ小女子 <福島県いわき市/西野屋食品>
・だるま最中 <福島県白河市/白河菓匠 大黒屋>
・白河高原清流豚 三五八漬け <福島県白河市/肉の秋元本店>
東北の伝統的な発酵食品である三五八漬けが、清流豚のしっとりとした赤身と甘味をさらに引き立てます。ほどよい塩気がこの酒の旨味と調和し、新春の祝い膳にも最適です。おせち料理の一品として入っていても違和感が無い。
しっとりしながらほどよい塩気かつ、引き締まった肉の旨味とお酒が実に好相性。
じゅわっとした肉汁が滴る炙り熟成肉は、しっとりと柔らかに馴染んだ食感。そこに三五八漬け特有のまろやかな塩気と旨味がしっかりと絡む。それらと良質の脂が混じり、強い甘味のように感じる。
これが絶妙なアクセントとなり、「千駒 純米 初しぼり」の芳醇な酸味と見事に調和。お酒の一口が更なる引き金となり、箸が止まらなくなる幸せな瞬間が楽しめます。
・竹ちくわ うに <福島県いわき市/夕月>
いわき市で地元から長年愛されてきた夕月から届いたのは、竹の棒ごとお届けするちくわ。既に見た目の時点からテンションが上がります。
しかも、練り込まれているのは海の黄金、至高の贅沢品である「うに」。ふっくらとした弾力とともに濃厚な海の旨味を届けてくれます。
「初しぼり」と合わせれば、うにの独特な香味とまろやかさが酒の酸味と重なり、潮風が撫でるような優しい調和が生まれます。口内に広がり続ける余韻とともに、もう一杯、もう一口、と自然に手が伸びる至福のペアリングです。これは美味しいね。
・国産よせ豆腐 <福島県福島市/大黒屋豆腐店>
こちらの国産よせ豆腐は、シンプルでありながら奥深い味わいを感じさせてくれる一品。ほのかに香る豆の甘みと僅かに塩の効いたバランスが絶妙で、これが上等なキャンパスのように「初しぼり」の魅力を鮮やかに際立たせてくれる。豊かなコク、香味がクッキリと描き出されます。
食感も実に良く、箸休めはもとより、舌の上でゆっくりと溶け合う酒と豆腐の調和が、静かで深い幸福感を与えてくれる。一口ごとに、口の中で福島の恵みが広がる瞬間が楽しめます。
・くるみ小女子 <福島県いわき市/西野屋食品>
甘辛いタレに包まれた小女子の優しい塩気と、香ばしいくるみのオイル感が絶妙に絡み合う一品。酒の酸味が小女子の出汁感を引き立て、タレの甘みとくるみの甘さ、そして薄皮の仄かな苦みのコントラストが後を引く美味しさを生み出します。口の中で味わいが次々に変化し、何度も新鮮な驚きを与えてくれる、全ての要素がお酒を進めせてくれる、無限に楽しめるペアリングです。
・だるま最中 <福島県白河市/白河菓匠 大黒屋>
白河の銘菓「だるま最中」は、かわいらしい姿だけでなく、その味わいも格別です。香ばしい最中の皮の中には、しっとりとした餡と求肥が詰まっており、「初しぼり」の柔らかな旨味がこれに寄り添います。餡の優しい甘みと酒のキリッとした酸味が織り成すハーモニーは、縁起物であるだるまさんの風貌とも相まって、特別な新春を彩るにふさわしい贅沢なひとときになること請け合い。お正月気分を満喫できる、心華やぐ一品です。
今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?
fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する、福島に息づいている文化を守っていく一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。
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