
今月も福島県在住のfukunomo愛好家である林 智裕さんが、fukunomoを体験しての感想&紹介をレポートしてくださいました!
【連載第79回目】
夜明け前の暁。ほどなくして水平線の向こうから昇る朝日。光を受けてて煌めく水面、澄み渡る空の蒼――。
「磐城壽 大漁祝 紺碧 純米吟醸しぼりたて」、それは浪江が歩んだ軌跡、あるいは奇跡の鼓動。
双葉郡浪江町──日本中の視聴者を魅了し続けてきたテレビ番組「THE鉄腕DASH」の「DASH村」があった地である。しかし、2011年の東日本大震災と、それに続く原子力災害は、この町の風景を一変させた。
鈴木酒造店もまた、その未曾有の災禍に呑み込まれた。押し寄せる津波は、代々受け継がれてきた蔵を壊滅させ、長い歴史の中で育まれてきた酒造りの酵母も、設備も、すべてを奪い去った。さらに、原発事故による全町避難が決定され、浪江は長年にわたり、人の営みが途絶えた町となった。
酒造りの灯は、もはや二度とこの地に戻らないかに思われた。
だが、そこにひとつの奇跡があった。震災のわずか2か月前、研究のために遠方の機関へと預けられていた酵母が、奇跡的に難を逃れ、生き残っていたのだ。
蔵元は、このわずかに残された希望の種を手に、避難先の山形で「磐城壽」を醸し続けた。いつか浪江の地に戻り、再び浪江の酒を造る──その想いを支えに、地元を離れながらも酒造りを絶やすことはなかった。
そして2021年、ついに浪江町での酒造りが実現する。地元農業の復興も願い、地元で育てられた食用米を用いた地酒。浪江の土、浪江の水、そして浪江に生きる人々の手で醸される、「ふるさとの酒」が再び生まれたのである。
今回の「磐城壽 大漁祝 紺碧 純米吟醸しぼりたて」もまた、その想いを受け継ぐ一本。幾多の困難を乗り越え、再びこの地に甦った酒には、単なる味わいを超えた、浪江という土地の記憶と人々の願いが込められている。
あの災害から14年目を迎える3月。この節目の月に浪江町から届く酒は、fukunomo100号記念をも飾る1本。双葉郡に出自を持つ私にとっても、万感の特別感がある。
この一杯に、復興の歩みと不屈の精神を感じながら、そっと杯を傾けてみてほしい。
浪江町産のコシヒカリを吟醸の位にまで磨き上げ、丹精込めて醸された酒は、栓を開けた瞬間に「しぼりたて」ならではのフレッシュで躍動感ある香りが広がる。まるで、降り積もった純白の新雪に一歩踏み出した瞬間のような。あるいは丁寧にラッピングされたプレゼントを手に取った瞬間の高揚感、小綺麗なリボンをほどくときの僅かな緊張、張りのある包装紙が擦れる音とニオイにも似た、特別な感覚がある。
一口目には、風が頬を撫でるような清々しさと、弾けるような軽快さ。その後、柔らかい口当たりがじんわりと広がり、最後には深い紺碧の余韻の静寂が波のように寄せてくる。
懐が深く、優しく、どこまでも穏やか。さまざまな肴を包み込む包容力を持つ酒でもある。とりどりと重ね、組み合わせる度に、吹き抜ける東風(こち)や春時雨に揺れる水面(みなも)のように、味わいの表情を変えていく。飲み手のこちらも、寄せては返す波のように杯を重ね続けてしまう。
震災直後。無人となった町を歩いた当時の私には、今の幸せを想像できなかった。あの日から今日まで。酒を造る人、飲み手、そして、これを読んで下さっている方も含めた福島に想いを寄せる人――全ての人々の願いの結晶が、この一杯には込められている。
だからこそ、この格別の酒は、杯を重ねるほど、より味わい深くなる。
この地の復興を堪能させてくれる味、未来を確信させてくれるような素晴らしい1本だ。
今回も早速、「勝手にペアリング」からいってみましょう!
■今月の美酒
・磐城壽 大漁祝 紺碧 純米吟醸 しぼりたて <福島県双葉郡浪江町/鈴木酒造店>

■勝手にペアリングを考えてみた
「磐城壽」といえば、浜の酒。やはり海の幸との相性が抜群です。特に「大漁祝」と名付けられたからには、まさに海の恵みとともに楽しむために生まれた酒と言っても過言ではないでしょう。早速、海のものと試してみたいところ。
・アジのたたき × すり白胡麻
まず試したのは、アジのたたき。特有の風味を持つ青魚と合わせても、酒の持つ優しい酸がふんわりと包み込み、絶妙な調和を生む。そこにポン酢の酸味と薬味として刻み海苔と青じそを添えると、さらなる広がりが生まれる。
ここでおすすめなのは、すり白胡麻との組み合わせ。胡麻の香ばしさが「磐城壽」の香味をさらに引き出し、更に奥行きのある味わいに変化する。魚のみならず、薬味との相性も良いのは、流石は浜の酒!と思えますね。
・シラス干し+シラウオのオイル漬け
浪江はシラスやシラウオが名物なので、それぞれをあててみました。繊細な旨味が合うのはもちろん、オイルのコクを加えても良い。ここに青じそや地元の海苔を添えれば、さらに風味も際立ちます。
・ピリ辛青唐エリンギ
シラウオのオイル漬けでも感じたように、「磐城壽」の持つふくよかさは、オイリーな旨味ともよく合う。イワシのアンチョビとか、タコなどと合わせても美味しいはず。オイリー繋がりで、他にはたとえば濃厚な肉味噌やエリンギのオイル漬けなどでも良い。オイルはオリーブオイルのみならず、胡麻油の香りとも相性よさそう。「薬味との相性が良い」点が際立つ感じ。
これは素材から出る脂とも当然相性良いので、トロとかサーモンなどでも良いし、地元の魚でいえば「メヒカリ」などもお薦めだと思えます。
・YONOMORI BAUM(ヨノモリバウム) さくらもち風
桜の季節が近いので、もし、この酒とともに楽しむ甘味を選ぶなら、同じ双葉郡の富岡町・夜の森地区の「BAUM HOUSE YONOMORI」から販売している米粉バウムクーヘン「YONOMORI BAUM(ヨノモリバウム) さくらもち風」を個人的には推したい。米をベースとする日本酒との相性はもちろんのこと、ふわりと広がる桜の香りが「磐城壽」の爽やかな香りと寄り添い、春の訪れを感じさせてくれるんじゃないかな。
では、今回もfukunomoペアリングの実食に行ってみましょう!
■今月のマリアージュ/ペアリングセット

・メヒカリ開き干し <福島県いわき市/上野台豊商店>
・ごぼうさつま<福島県いわき市/カクカ中田商店>
・福島のいかにんじん<福島県南相馬市/菅野漬物食品>
・いわき発小名浜食堂 筑前煮<福島県いわき市/小泉食品>
・福島県産ミニトマト<福島県いわき市/あかい菜園>
・メヒカリ開き干し <福島県いわき市/上野台豊商店>

福島・いわきの海を代表する名産品、メヒカリ。ふっくらとした白身には上質な脂がたっぷりと乗り、絶妙な塩加減がその旨味をさらに引き立てる。箸を入れるとほろりとほぐれ、口に運ぶとジュワッと染み出す脂の甘み――。
ここに、「磐城壽」をひと口。脂っぽさをすっきりと引締めながら、しかしジューシーに広がる旨味が、メヒカリの持つ脂にほどよいエッジを効かせた上で、余韻を心地よく残していく。塩気と脂の甘み、そして酒の穏やかな酸味が波のように交互に訪れる。
ここに、すだち、あるいは柚子などで僅かに柑橘系の酸味や苦味を加えるのもおすすめ。爽やかな香りが酒のフレッシュさを際立たせ、脂の旨味に清涼感を加えてくれるはず。
・ごぼうさつま<福島県いわき市/カクカ中田商店>

ふっくらと練り上げられたすり身に、細く刻まれたごぼうがたっぷりと練り込まれたさつま揚げ。一口噛むと、じゅわっと広がる魚の甘みと、ごぼうの香ばしい風味が絶妙に絡み合う。食感、香り、味、全てがこの酒と好相性。
これを軽く炙ると、表面がこんがりと焼き色を帯び、香ばしさがさらに際立つ。この状態で「磐城壽」を合わせると、酒のふくよかな旨味がさつま揚げの甘みを引き立て、後味にはごぼうのほろ苦さが心地良く残る。
このさつま揚げ、他にも温かいおでんに使って、出汁とともに楽しんでみたりするのも美味しそう。
・福島のいかにんじん<福島県南相馬市/菅野漬物食品>

シャキシャキとしたにんじんの食感と、いかの旨味が見事に調和した、福島の郷土料理「いかにんじん」。噛めば噛むほどにいかの旨味がじわじわと広がり、ほんのり甘めの味付けが心地よい余韻を残す。
本来、いかにんじんは福島県中通り地方を中心に食べられてきましたが、海沿いの浜通り、浜の幸を良く知る菅野漬物食品さんのいかにんじんは、特に浜の味わいとの相性が抜群。出汁の旨味と人参の食感がしっかりと感じられ、お酒を益々美味しくしてくれます。シンプルながら奥深い味わいの一品と、磐城壽の持つ包容力のある酒質は、まさに、福島ならではのペアリングの醍醐味ともいえるのではないでしょうか。
・いわき発小名浜食堂 筑前煮<福島県いわき市/小泉食品>

様々な具材を炊き合わせた、どこか懐かしさを感じる素朴な味わい。出汁の香りがふわりと立ち昇り、やわらかく煮含められた具材がじんわりと舌の上でほぐれていく。鶏肉の旨味が染み込んだ大根、噛むほどに甘みが広がるにんじん、そして春の息吹を感じさせるたけのこ。それぞれが持つ滋味深い味わいが、「磐城壽」の柔らかな口当たりと見事に溶け合い、まるで一つの料理のように調和する。
この酒の持つ穏やかさは、煮物の持つ甘みや出汁のコクと寄り添い、まるで長年連れ添ったパートナーのように自然に馴染んでいく。特に、大根やたけのこが持つほんのりとした渋みは、酒の軽やかな酸味と呼応し、味わいに奥行きを加える。筑前煮の温かみのある旨味が酒に包み込まれることで、より深く、より心に染み入る味わいへと昇華される。瞬間的にぬる燗、人肌燗になることで、酒の香りも心地良く立つ。
筑前煮をひと口、酒をひと口。ゆっくりと流れる時間の中で、「磐城壽」の物語を一層感じることができる一品。
・福島県産ミニトマト<福島県いわき市/あかい菜園>

そのまま食べるだけでも、トマトの甘酸っぱさが「磐城壽」の優しい旨味を際立たせ、すっきりとした後味を残してくれる。さらに、ここで蔵元からの提案として「ミニトマトを潰して、そこに『磐城壽』を注いでみてほしい」とのこと。
グラスの底に広がる鮮やかな赤。そこへ酒をゆっくりと注ぐ。トマトの果肉がゆらめきながら酒に混じって調和し、まるで海に沈む夕日のような美しいコントラストが生まれる。(もっとも、太平洋に日が沈むことはないですけれど)
口に含むと、トマトのフルーティーな酸味と酒の柔らかな甘みが躍動感を持ち、よりジューシーな爽やかさを感じさせる。この飲み方は、フレッシュ素材を使ったカクテルを楽しむかのような面白さがありますね。
今回もご紹介させて頂いたfukunomo。もし良ければ、みなさまご一緒に楽しみませんか?
fukunomoは美味しい!楽しい!はもちろんのこと、福島県内の酒蔵さんやおつまみの企業さんを応援する、福島に息づいている文化を守っていく一面もあります。ぜひご利用頂ければ幸いです。
この記事を読んでfukunomoを試してみたいと思った方は、下にある特別リンクからfukunomoスタンダードコース、またはプレミアムコースにお申し込みいただくと、特別なおまけも付いてきます♪ ぜひこの機会にお申込みください。お待ちしています。(*´▽`*)
申込期限2025年3月10日(月)まで